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第17章 【彼と彼の兄と姉】

「あの子たち昔から仲良しだったけど、まさか"兄弟"になっちゃうとは思わなかったなぁ」
「ほんとよね。聞いたときは驚いたわ」

いつも流星さまが座る場所に椎名さまがいて
その真正面
いつもは麗さまが座る場所に羅々さまがいる。


何だか、変な感じ。お二人にお茶をお出しした後、わたしは自席である下座に腰を下ろした。

「羅々ちゃんの旦那くんまた海外なんでしょ?心配じゃない?」
「ダーリン?平気よ?貞操帯着けさせてるから」
「さすが羅々ちゃん」

実は椎名さまの本職はお医者様。今は休職していらっしゃるけど、以前は大きな病院に勤められていたと伺っている。そして羅々さまは歯科医師。ご自分のクリニックを構えている方だ。

専門は違えど、お医者様同士話が合うみたい。医療用語らしいものを交えながら、話に花を咲かせるお二人をぼんやりと眺めた。

「唯くん元気?全然会ってないんだよねー」
「兄貴も元気よー。子供達もやんちゃだし」

ゆいくん、は麗さまと羅々さまのお兄様だ。わたしも名前だけは知っているけど、まだお会いしたことはない。椎名さまとは同級生だと以前伺ったけど…。

そうか…流星さまと麗さまが幼馴染みなんだから、その兄姉である椎名さまたちだって馴染みがあって当然かぁ。なんて思っていたら椎名さまが溜息をついた。


「流星、昔はあーんなに可愛く"お兄ちゃん、お兄ちゃん"ってなついてたのになぁ。今じゃ見る影もないしね。でかいし可愛いげないし」
「あたしもよく麗に化粧したりスカート履かせたりして遊んでたけど、あんな愛想ない男になっちゃうとはねー。…だから未結ちゃんには感謝してるのよ」

ふいに羅々さまがこちらを向いた。

「あんな超面倒くさい坊や達に付き合せちゃってるんだから。実はあたし今日はね、それも確かめに来たの」
「え…?」
「麗達に無理強いされてるんじゃないかって」

羅々さまの表情は真剣だった。

羅々さまはわたしを妹のように可愛がってくれる、優しい人。ここで住み込みの家政婦になることはお知らせした。『女としても求められる』のは伏せて。

…でも羅々さまは知っていた。
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