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第17章 【彼と彼の兄と姉】
「予想つくじゃない。しかも坊や達、一回フラれてるんでしょ?なら尚更よ」
仕事を無くし、住まいを無くし、
挙句の果てに肉親まで亡くして。
そこに弟達はつけこんだのではないか。
逃げ場がないのをいいことに、好きなように扱われているのではないか。羅々さまはそれを心配してくれていた。
「あたしや椎名くんなら、まだあのおバカどもに意見できるから。ひどいこと、されてない?」
「……」
「もし未結ちゃんがもう耐えられない、辞めたいってなれば」
「!いいえ…っ!」
確かに、辛いこともある。納得できないこともある。
…怖い思いをしたことも。
でも、それ以上に、わたしは…
『未結』
彼らのことが好きなんだ。
「…流星さまも、麗さまも、わたしを大切にしてくれています…」
「未結ちゃん?」
「わたしは…いえ、わたしが…!」
それは誰のせいにもできない。
言わされているものでもない。
彼らとここに居たい
彼らのそばに居たい
それがわたしの本心だった。
静寂が室内を包む。それを破ったのは椎名さまだった。彼の弟がいつもそうするような、間延びした声で。
「流星も麗ちゃんも幸せ者だね。いーなあ、ほんと。やり放題。うらやましー」
「椎名くん。…わかったわ、未結ちゃん。でも本当に何かあったら言うのよ?」
「…ありがとうございます…」
小さく息をついて、羅々さまは頭を撫でてくれた。いつも彼女の弟がそうしてくれるように。
────────
「未結ちゃん、流星くんが体育以外オール特Aの超優等生だったの知ってる?なにげにトリリンガルなのも」
「え?!」
「そーそ。流星は病弱だったから外遊びできなくて。流星ママはTVゲーム嫌いだったから、あの子本読むか勉強するかしかなくてねー」
その後、短い時間ではあったけど。お二人はわたしが知らない彼らの話を聞かせてくれた。
「麗ちゃんはねー。まあ荒れて荒れて」
「言わないであげて。麗の黒歴史だから」
「……」
わたしの知らない彼らの話をする
彼らと血の繋がっているお二人。
お兄さんがいる。お姉さんがいる。
いろんな事情があるだろう。でも
わたしは彼らが少し羨ましかった。
兄弟も、姉妹も、…家族も。
わたしにはないものだから。