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BeLoved.
第19章 【彼女がその日の彼。1】
『これから帰るね。俺の部屋にいて』
その夜。片付けも入浴も明日の仕度も全て済ませた頃、わたしの携帯に今夜のご主人様である麗さまからのメールが届いた。
遅くなると言われていたのに。予想外の早い帰宅に胸を踊らせながら、言いつけ通り彼の部屋に向かう。
ベッドに腰かけて待っているあいだも…末尾の一文を思い出すだけで体の奥が熱くなった。
『未結が欲しい』
いよいよ訪れた『初めての夜』。大好きな彼がわたしを欲してる。そう実感しただけで、恥ずかしいけど…疼いて、下腹部が締め付けられるような感覚にな… …えっ?…嘘でしょ…
─────────
廊下から足音がした。緊張が走る。
勢いよくドアが開き、麗さまが姿を現した。
「…ただいま」
部屋の明かりは、短く彼が足を踏み入れるとほぼ同時に消された。ドアの真横にあるスイッチに打ち付けられた拳で。
ドアは閉められ鍵もかけられた。暗闇のなか、彼が着ていたシャツを脱ぎ捨てた音が微かに耳に入った。
そのまま無言でまっすぐベッド…ううん、『わたし』へ向かって歩いてくるのがわかる。
「お帰りな…… あ」
わたしの正面。向かい合う格好で足を止めた彼は、上体を屈めわたしの顎に右手を添え上向かせた。
「れ…、っ…」
重ねられた唇。反射的に目を閉じると、石鹸の香りが鼻をくすぐった。湯上がりなのかな…いい香り。浸ってしまう。
「…ごめんね、未結」
優しくしたいけどできそうにない。ゆっくりとわたしの体を押し倒しながら彼は言う。手を取られ触れさせられたのは、ボトムの堅い生地越しでもその存在が伝わる彼自身。それはどんなに整った外見をしていようとも、彼は『男』なんだと改めてわたしに知らしめた。
呼吸も荒い。抑えているようだけど…こんなに余裕がない彼は初めてだ。わたしを欲してやまないのがわかる。普段冷静な彼がこんなに。…堪らなく嬉しかった。
…でも駄目。それには応えられない。
散々葛藤した末わたしは意を決した。