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BeLoved.
第19章 【彼女がその日の彼。1】
「…て、まって…、れ…っ」
「焦らさないで、未結」
「ちがっ……んん…っ」
制止の声も、鎖骨から耳の裏側まで一気に舐めあげられ途絶えてしまう。耳たぶを甘噛みされ、もう言葉を続けられない。
寝間着の裾から入り込んだ手が、下着をつけていない胸の膨らみにじかに触れ、少し強い力で揉まれる。その手を掴み、理性と勇気を振り絞り声をあげた。
「あの…っ、わたし…っ!」
「……なに?」
二度目の制止で、さすがに煩わしそうな声を返されてしまった。まだ闇に目が慣れていないため見て取れない表情も、同じようなものに違いない。それでも怯むわけにいかない。だって…
「は、始まっちゃった…んです…」
…そう。彼を待つこの数十分のあいだに……月のものが来てしまったのだ。
――――――――
「ごめんなさい…」
「なんで謝るの。お腹大丈夫?痛む?」
「…痛くはないです…」
あれから。麗さまは「ああ」とだけ言い、すぐにわたしから離れた。服も直してくれて、ベッドに寝かせたお腹にそっと布団をかけて、更に気遣ってくれた。
確かに、わたしのせい、という訳ではないだろうけど…彼の優しさが逆に痛かった。胸を占めるは罪悪感。それに…
「あ、あの…コンビニ行ってきます…」
「なんで」
「その…買い置きが…」
そう…恥ずかしい話、無いのだ。
予定では来週だったはずだから。今は化粧ポーチに残っていた最後のひとつを宛がっている。女としてどうなの?情けない…
「俺行くよ。夜用の羽ありでいい?」
「はい、それで…って、お詳しいんですね…」
「姉貴に散々パシらされたから」
何てこと無さそうな口調で麗さまは言うと、先程脱ぎ捨てたシャツを拾い上げさっさと着込んだ。もう闇に目が慣れたため、その様子はよく見える。
「他に欲しいものあったら電話して。先寝ててもいいから。腹と腰、冷やさないでね」
そう言い残し、彼はわたしの返事を待たずドアを静かに閉め出掛けていった。
一人になった部屋の中で思い返す。あまりにも普通に問われたのでわたしも普通に答えてしまったけど…よく考えると恥ずかしすぎる。
挙げ句の果てにこんな、使い走りまでさせるなんて。家政婦としても女としても失格だ。
「ん〰…もう…っ!」
重さと不快感を増してくるお腹と、やり場のない気持ち。
打ち消すように枕に頭を打ち付け、そのまま布団に潜り込んだ。