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BeLoved.
第19章 【彼女がその日の彼。1】
なおも反論しようとするわたしに、もはや麗さまは呆れた口調になった。
「もう寝よう。おまえ少し変だよ」
「……」
確かに今のわたしは普通じゃない。自分でもそう思う。言葉が見つからず俯いた時だった。
「…でも」
「……?」
「そう思うなら、思わせる俺が悪いんだね」
ごめんね、と。
与えられたのは唇へのキス。
「…大丈夫だよ。今日が最後じゃないし」
「……」
「ずっと一緒にいるんだから」
「!」
目を見開いた。…そう思っていいの?戸惑うわたしに彼は続ける。静か、でも確かな口調で。
「…どこにも行かないでって言ったよね。だから俺も行かない」
胸元にぎゅうっと抱き締められて。心臓の鼓動がすぐ側で伝わってくる。
穏やかで規則正しい音。それに従って、わたしの中のもやもやした気持ちが少しずつ晴れていくのがわかった。
今夜は『はじめて』は叶わなかったけれど『これから』のことを少し知れたのだから。麗さまがどんなにわたしを想ってくれているのかも。
「明日の朝飯は期待してるからね」
「…っ、はいっ!」
彼らしい言葉でようやくわたしも笑顔を取り戻せた。晴れた気持ち、包まれる温もり、何度も頭を撫でてくれる優しい手。彼のくれる全てが心地よくて。いつしか眠気に誘われたわたしの目は閉じていた。
「おやすみ、未結。愛してるよ」
彼が最後にくれた言葉に、心の底から幸せと悦びを感じて。わたしは眠りに落ちたのだった。
──お気楽なわたしは知らない。
麗さまがどれだけ自分を殺していたのかも、わたしが熟睡したのを見届けた彼が、とある目的を果たすため部屋を後にしたことも。
「…抜いてこよ」