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BeLoved.
第19章 【彼女がその日の彼。1】
「あの…麗さ…、…ごめんなさい」
「…だから、なにが?」
さっきから何謝ってんだろう。
彼の顔にはそう書いてあった。
「あの…せっかく…その…できなくて…」
「──ああ、なに。それ?」
少しの間の後、思い出したように彼は言った。…忘れてた?ううん、そんなわけない。大事な『初めての夜』になるはずだったんだから。
「っあの…麗さまさえよければ…今からでも」
「…そういうの要らないから」
もはや哀願ともとれる申し出に対しての返答は、断りだった。
むしろ気に障ってしまったみたい。自分が言ったことを後悔し、俯いた。
「ごめんなさい……」
ああ、求めに応じられないどころか自分のこともろくに出来ない。その上優しく気遣ってくれるご主人様に余計なことを言ってしまう。わたし何やってるんだろう…こんなことじゃダメだ…どうしよう…。
…ああ、嫌だな、どんどん深みにはまってる。何とかしなきゃ…。わたしは一人どつぼにはまり続けた。
「俺は逆に、何で未結がそんなに恐縮してるのかが気になるよ。…もしかしてボンクラに何かひどいこと言われたの?」
「!ないですっ!そんなの!」
その最中にかけられた、疑いと殺気で満たされた低い声での問い。我に帰り慌てて否定した。
まだ帰宅していないもう一人のご主人様、流星さま。
彼とも以前同じような状況になったことがある。…笑ってしまいそうなほど大袈裟に落胆してくれた。
でも、本当に傷つくことは決して言われなかったし、されていない。詳細は省くけど、そのことだけはちゃんと伝えなきゃ。
「…そう?なら良いけど」
「はいっ…」
若干怪しまれている感じは否めないけど…一応納得しては頂けたようだ。肩に手を回され、向かい合う形で彼の胸に抱き寄せられた。
「…じゃ、大丈夫だってわかったね」
「……」
「…安心した?おやすみ」
……いつもの麗さまだ。
子供、と言うよりもはや赤ちゃんをあやすように頭を優しく撫でられる。あったかい…心地いい。…でも…。
「…未結ちゃん」