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LaundryHeavenly.
第13章 Heavenly.13
それは低くて甘くて。私の中に入り込んで
体の内側から安息を与えてくれる、彼の声。
今の私にはよけい辛く響いた。
ハイジさんが座っていた椅子に
今はブライトさんが座っている。
寝台にいる私と目線を合わす為
彼は上体をわずかに屈め告げた。
「我々は解散することになった」
─────────
「まず謝ったらどーなの」
事の詳細を聞かされるより早く、
下から不満に満ちた声があがる。
床に座り込んだハイジさんだ。
私が当てていた濡れタオル。それは今は
痛々しく腫れた彼の左頬を冷やしている。
今しがたブライトさんからの
殴打をもろに喰らったせいだ。
「…ああ、レノすまない。また怖がら」
「ちーがーうーでーしょ!僕!僕!!」
「襲っているとしか見えなかったんだ」
彼が見たのは乱れた衣服の私と
私に覆い被さるハイジさんの姿。
誤解も仕方ないかもしれない。
殴打はいつかの制裁の時…否、あの時以上の
速さと強さだった。ハイジさんの体は一瞬で
私の視界から消え失せて真横に吹っ飛ばされ
彼は奥歯を一本失うことになってしまった。
曇った表情で私を見るブライトさんに対して
仏頂面のハイジさんは全くもうと喚き散らす。
「あと"あれ"。いーの?」
ハイジさんが顎で指し示したのは私の背後。
ベッドに座る私の体に両手をしっかり回して
ぴたりと密着し包み込むように抱き締める…
ナノさんのことだ。
『死んではいない』と言われていた彼もまた
…酷い顔だった。頬は腫れ上がり唇には瘡蓋。
片目は眼帯を装着したその姿は、加えられた
『制裁』の激しさを物語っていた。
「…姉さん奪ったら殺しますよ」
「ほらー。まだ危ないよこの子」
「わ…私は大丈夫です…」
彼は私を『姉』だと思い込んだままだった。
ブライトさん曰く、離れている間ずっと
彼は『姉』つまり私を求めていたそうだ…
解散する迄は隊員は隊員。
突き放す訳にはいかない。
一人にさせるのも訝しい。
しかし私の容態も確認しておきたい。
しかし私は彼に怯えてしまうだろう。
だから廊下で待機させるつもりだった。
…が、ドアを開けた先には…前言の光景。
騒ぎに乗じ部屋に入り込んだナノさんは
私を見つけると一目散に駆け寄ったのだ。
「全く…」
私達3人のやり取りを見た部隊長は
深く深い溜息をこぼしたのだった。