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LaundryHeavenly.
第5章 Heavenly.5
「──さすがですね、ハイジさん」
雨は日の入りと共に止んだ。
ハイジさんの『検分』に合格した私は、テントに帰りついたブライトさんとナノさんを迎え入れた。
──無論、『専属娼婦』として。
経緯を伝えられた二人は驚き、ナノさんに至っては、皮肉を込めた賛辞をハイジさんに向けた。
「そりゃあね。僕ですから」
「そうですね。あんた人騙くらかすのが仕事ですしね」
「"謀略兵"って言ってくれる?…てゆーかさあ、ナノ。何?その態度。僕一応、君の上官なんだけどー?」
「やめないか、二人とも!」
珍しく険悪な雰囲気に陥りつつあった二人の間に、ブライトさんが割って入った。
お互い言い足りない様子だったけども、隊長の命では止めざるを得ないらしい。
渋々引き下がり、お互い離れた位置に腰を下ろした。
「──もう一度聞く。本当に、『お前』は、いいのか?レノ」
寝台に腰かける私のもとへ、ブライトさんは歩み寄ってきた。
そしていつものように、私の目線まで屈んでくれた。
吸い込まれそうなほど綺麗な、深緑の瞳が私を見つめる。
「…はい。…私は…娼婦になります。……いえ、ならせて下さい」
その瞳を見つめ返し、膝の上で握りしめた両手に力を込める。
私が本気であることは、ブライトさんのみならず他の二人にも伝わったようだ。
ナノさんが再びハイジさんに尋ねた。
「…ハイジさん。あんた本当に、何て言って脅したんですか」
「まぁた人聞きの悪い。僕は誘っただけ。『決めた』のはレノちゃんだよ。ね?」
確かにその通りだ。
ハイジさんは決して『なれ』とは命じていない。
あくまでも彼は『決めてくれ』と促しただけだ。
『なる』と『決めた』のは、私自身なのだ。
はい、と頷いた私に、ブライトさんは目を伏せ溜め息をついた。