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LaundryHeavenly.
第7章 Heavenly.7

「最後はブライトね。あの人は確かナノ兄と同い年だったから…28歳!神父さんだよ」
「!ブリーチなのですか?!」

私は今度こそ皿を落としたあげく、
素っ頓狂な声をあげてしまった。

『ブリーチ』それは王家に次ぐ高い位。
『聖職者』階級を指す。

貴族ならまだしも、平民…ましてや奴隷など、同じ空間に居ることすら畏れ多い高尚な人々。

どうしてそんな人…いや、お方がここに?
どうして兵士に?戦地に?どういうこと?

「国のために戦いたかったんだってさ。意味わかんない。偉いよねー」

衝撃と疑問とで固まってしまった私の胸中は
そのまま表情になって出ていたらしい。

褒めているのか貶しているのか分からない口調で教えてくれながら、ハイジさんは地面に落ちた皿を拾い上げ、割れなくてよかったと机に置いてくれた。

「だから教会も許可したんだよ。貴族一家と奴隷夫婦の墓を並べるなんて、一兵士の訴えでできるわけないよね?」
「あ…」
「"長く仕えた彼らの忠誠心に敬意を表して"って。ちなみに弔ったのもブライトだよ」


『──かくあらせ給え』

『誓い』の最後の言葉。
安心を与えてくれる掌。
低くて穏やかな甘い声。

神父さまだというならば納得がいった。
…しかしながら、尚更私の中は混乱する。
感謝、驚嘆、畏怖。様々な感情が交差し、言葉が出ない。

「真面目過ぎるんだよね。彼」
「…ご立派ですよ」

ナノさんが戻ってきた。彼は定位置に置かれた防具を手に取ると、離れた位置に腰を下ろし手入れを始めた。部隊内で一番格下の彼は、そういった雑用もこなす。ならば…と私は以前から思っていた疑問をやっと口にした。

「あの…どうしてハイジさんは…その…」
「上官に馴れ馴れしいのか、でしょ?それは、"お答えできません"」

勘のいい彼はこちらが口に出す前に汲み取り、あっさりとはぐらかした。すかさずナノさんが苦言を呈する。

「…彼女には知る権利があるんじゃないんですか」
「全部とは言ってないよー」

にこやかな表情での抑制。ナノさんは小さく息をついた。呆れたような、諦めたような。私に対しても『聞くだけ無駄』と知らしめているようだ。

「……」

彼らが言うには、ブライトさんは夕方には戻るらしい。つまり、恐らく今夜が私の初仕事だ。

──やれるだろうか。

彼らの素性を垣間見た今、心境は複雑だった。
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