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LaundryHeavenly.
第7章 Heavenly.7
「次はナノ。歳は20。出生は"バシュミテル"だよ」
「えっ!?」
告げられた事実よりも、そんな大事なことを
さらりと言ってのけたハイジさんに驚いてしまった。
『バシュミテル』それは『貴族』階級。
旦那様一家と同じだ。
ハイジさんが言うには、ナノさんのお家は代々医師の家系であり、彼自身もまた、お医者様。
彼のお父様は軍医の最高位である総監で、お兄様も、若くして名声を得た軍医。
彼にも確固たる地位と名誉が約束されている。
ただ彼はまだ若く、経験が圧倒的に足りない。
それを補うため部隊へと志願入隊し、
衛生兵として実践経験を積んでいる。
負傷した隊員を看護し、また
その『最期』を看取ってきた。
「…そこまで話す必要ありますか?」
「彼女には知る権利があるんだよ」
自身のことを語られ、ナノさんは不服そうに申し出たが笑顔で一蹴された。
ハイジさんはそのまま楽しそうに、ナノさんの頭をわしゃわしゃと撫でた。
私はそれにも面食らってしまう。
平民と貴族。
通常ならこんな風に並んで食事をするなど、ましてやこんな風に戯れたり従わせたりなどあってはならないはずだ。
娼婦を味わう順番然り、食事の取り方然り。彼ら兵士の上下関係に、身分なんて関係ないのだろうか…。
「でね、続きなんだけど」
「…ちょっと出てきます」
再び話し始めたハイジさんを遮り、ナノさんは立ち上がった。乱された髪を直すこともなく、足早にテントから出ていってしまう。
不快にさせてしまったんだろうか。
後ろめたい気持ちを抱く私とは正反対に、ハイジさんは明るい口調で言葉を続けた。
「レノちゃん気にしないで。あれはスカしてるだけ」
「……。はい」
何となくナノさんの心中を察しつつ、空いた皿を重ね始めた時だった。ハイジさんの声色が変わった。
「あ、もしナノが相手の時、危険感じたらすぐ逃げて」
「…?どういうことですか?」
「あの子、自分のお兄ちゃん半殺しにしちゃったんだよ。うちに配属されたのもそれがホントの理由」
危うく皿を落とす所だった。
ハイジさんは構わず続ける。
「スイッチ入っちゃうと怖いってゆーかね。まあ、前情報として知っといて。多分ナノが一番君に溺れるから」
「…なんで…そんな」
彼は私を歓迎していないのに。
震える声への答えは笑顔。
「否定から入る奴が一番ハマるのさ」