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LaundryHeavenly.
第8章 Heavenly.8

ハイジさん達の読みは外れ、ブライトさんの帰りは日没を迎えたあとだった。

もうすっかり『夜』と呼べる時間帯。
辺りは闇に包まれ、空には星が瞬いている。
膝を抱え座り込む私はそれに見とれていた。

「きれい…。……」

頬を夜風がくすぐる。
暑くも寒くもない丁度よい気温。静寂。
久々に心の底から落ち着ける気がする。

しかしそれは束の間の幻想だった。背後から響いた怒鳴り声は、容赦なく私を現実に引き戻してくれた。


「追加兵が来ない?7人も欠けたのに?!」

案の定、ブライトさんは軍本部に出向していた。帰りついて早々、彼は隊員に軍の現状を告げた。戦況は劣性。それに伴い王都、とりわけ王室警護に、より多くの人員が割かれることとなった。
従って、本来なら即座に補充されるはずの各地駐屯部隊の欠員。ここに充てられる人間が足りない。
それはこの45部隊も例外ではなかった。

「あのバカ王子が来る可能性もあるのに?!」
「…王家を途絶えさせる訳にはいかないんだ」

珍しくハイジさんが興奮を露にしている。
それに対するブライトさんの声も、叱咤というよりは…宥めるようなものだ。
『王室軍』たるもの、最終的に護るべくは『王家』なのだ、と。

「…子供が死んでるんですけどね」

ナノさんの小さく短い呟きからも、ハイジさん同様、下された決定に対する不服と不快感が滲み出ていた。

そしてそれは私の胸を抉る。
死んだ子供。それはお嬢様。

敵国王子は、一度襲った場所を再び襲う。
理由はわからない。それがいつなのかも。

何の罪もない子供を殺したうえに
更に追い討ちをかけるというの?

どうして?わからない。
──怖い。怖い。怖い。

自分自身が置かれている現状。
それをまざまざと思い知らされたいま
私は逃れるように頭を抱え縮こまった。



「──で、お前は何をしてるんだ、レノ」
「っ、ひゃっ!」

その項垂れた頭にいきなり広がった温もり。
跳ね起き、裏返った声をあげてしまった。

振り返り見上げた先には…ブライトさんの姿。
温もりの正体は彼の掌だ。
目線まで屈んでくれた彼の表情は訝しむもの。

「いつまで外にいる」
「あ…」

──そう。私が居るのは共有テントの外。入口の脇。
中で話し込む彼らの声を背に、座り込んでいたのだ。

「お前にも話がある。こっちに来い」
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