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LaundryHeavenly.
第9章 Heavenly.9
『相手が望むことには全て従う』
逃げるな。と、彼は命じた。
触れたい。と、彼は求めた。
私はそれに抗い続けている。
駄目。それでは駄目なんだ。
思い出せ。私が『彼ら』から受けた恩を。
思い出せ。私が『娼婦』になったわけを。
「!…あ…っ」
霧が晴れるように、鮮明になっていく頭。
直後、無防備だった背中に何かが触れた。柔らかくて生暖かいそれが、彼の唇だと理解するのにそう時間はかからなかった。
啄むような口付けが肌の上に不規則に落とされていく。その度に、ざわざわとした言葉にできない感覚が全身を駆けた。
「あ…っ…ん、ゃ…っ」
啄みが背中を下っていくにつれて、ぴくん、ぴくんと上半身は震え、ざわつきが腰に集中していく。
丁度その部分を覆い隠していたシミーズは、緩やかに引きずり落とされていった。
今度は抵抗などしない。なされるがまま、私は一糸纏わぬ姿になった。
「…レノ、こっちを向いて」
与えられた言葉。小さく返事をし、肩に添えられた手が導く前に仰向けになった。
「……っん、う…っ」
再び口付けが落とされた。今度は露になった胸元へ。鎖骨にあてられた唇はすぐに舌へと姿を変え、首筋を這い上がっていく。
「あ…っ、んん…っ」
まるで血管の通る場所を選んでそうしているかのように、甘く甘く歯が立てられる。痺れるような感覚に、堪らず声が漏れた。
「……い」
何事かの、小さい呟きのあと。
彼も着ていたものを脱ぎ捨てた。
私と同じ姿になった彼は、片足を私の脚の間に差し込ませ覆い被さると、左手を私の顔の真横についた。私の右手と重ね合わせ、指を絡めて。
囚われた。と言うのは間違いかもしれない。でも、もう絶対に逃げられない。勿論、そんなつもりはないけれど…
「…あ…っ?!」
もうすっかり闇に慣れた私の目が奪われたのは、剥き出しになった彼の雄そのものよりも、その右腿に巻かれた真新しい包帯だった。
…血が滲んでいた。昨夜の匂いは気のせいなんかじゃなかったんだ。彼は負傷していたのだ。
それに気付いた瞬間、上体は跳ね起きていた。
「ブライトさ…怪我…!」
「…構うな」
「でも…っ…血が…っ!」
「…構うな!」
同じ言葉で全く異なる語気。そして次に発せられた彼の言葉は、私の口をつぐませるには十分だった。
「…今はお前が欲しい。レノ」