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第9章 Heavenly.9

────私は、奴隷。


思いのままに扱っても罰は当たらない。
現にずっとそうされてきた。

過去に私を抱いた相手は、私が泣こうが痛みに苛まれようが血にまみれようが、構うことなどなかった。

「レノ？」

でも彼は違う。今のこんな状況でだって、私のことを気遣ってくれている。

『従い尽くす』それが奴隷。

ましてや私は今、娼婦となった。
何をされても受け入れるのが常。

だけど彼は、こんなに優しくしてくれる。
彼から見たら卑しい存在ですらある私に。

溢れ出た涙はもう止まらない。


「ごめんなさい…ごめんなさい…」
「……。おいで」

全身が温もりに包まれた。
私の全ては彼の腕のなか。


なんて暖かいんだろう。
私はそっと目を閉じた。


…ああ

彼が私の"初めて"だったら
どんなに幸せだっただろう

こんなおこがましい思いまで抱くなんて。

全てを失った『あの夜』から
私は本当に、おかしくなってしまったんだ。