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LaundryHeavenly.
第10章 Heavenly.10
「ぁ………」
「ほんと、予想以上だったよ。レノちゃんは」
再び伸びてきた腕は、私を包み込むように抱き締めてくれた。
一瞬戸惑った。優しい腕だったから。『仕事』だということを忘れてしまいそうになる。
ましてや痛みと恐怖を与えられた後のこの優しさは危険。わかっている。…だけどそれ以上に、身を委ねたくなっている自分がいた。
「おいで」
とどめを刺すかのような呼び掛け。…だがこれはある意味、命令でもあるのだ。ならば従わなくては。
そんなずるい言い訳を並べながら。私は彼にもたれ掛かった。
私は素肌だけど、彼は一枚シャツを着ている。それでも背中越しに、体温の心地よさが伝わってきた。
…この人はどんな風に私を抱くのだろうか。まだ長い夜を思い、緊張を覚え始めた時だった。
「ねえ、レノちゃん知ってる?」
「っ?」
いつも通りの明るい声。何事かと思い振り向こうとするが、首もとには彼の腕があり叶わない。彼は構わず楽しそうに続けた。
「悪夢はね、自分から眠っちゃうから見るの」
「…え?」
何を言われたのか、一瞬わからなかった。
だが、その直後。
「…ぅ、ぐっ?!」
気付いたときにはもう遅かった。
それまでの優しさが嘘のように、彼の腕はとてつもない力で私の首元を締め付けたのだ。
「だから、眠らせてあげるね」
「……!…」
逃げようにも、頭は反対側の手でしかと押さえ付けられているため動けない。
「ごめんねレノちゃん。君、危険」
頭の中がどんどん冷たくなっていく。
何も聞こえない。何も見えない。
──ああ。そうだ。どうして忘れていたの?
何が嘘で何が本当かわからない
この人は『怖い人』なのだと。
意識を失った…いわゆる『落ちた』状態になった私の耳に、彼の最後の言葉がかすかに届いた…気がした。
「……僕がハマっちゃうよ。出来ないのにさ」