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猫彼女。
第1章 cat.1
「あっくん、ただいまー」
玄関から聞こえたドアの開閉音と、間延びした声。俺は手を止め顔を上げた。
見上げた先は壁掛けの時計。時刻は午後六時過ぎ。
同棲している彼女のご帰宅だ。俺は立ち上がり、玄関へと向かった。
「おかえり、えりさ」
靴を脱ごうとする動作の彼女から、ふわりと漂うアルコール消毒薬の香り。
同じ21歳ではあるが、大学生である俺─浜崎敦士─に対し 彼女─森下えりさ─は、既に社会人。
介護士として日々真面目に労働している。
「あーお腹すいた。ご飯すぐ作るね」
そう言って彼女は、玄関からすぐの位置に備え付けられたキッチンの作業台に買い物袋を乗せた。
習慣である手洗いうがいをサッと済ますと、着替えのため奥へ向かっていく。
肉体を酷使するうえに、夜勤もあるハードな仕事にも関わらず。彼女は率先して家事をやってくれる。
明るくて気立ても良いし、かわいい。
本当に、俺には勿体ない彼女なのだ。