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猫彼女。
第6章 cat.6

世界中の時が止まったみたいに静かだ。
どれくらい微睡みの中にいたんだろう。


「にゃー」
「!!?」

突然、耳に飛び込んできたその声。
眠気なんか吹っ飛び、まるでバネのように
上体を跳ね起こした。
ついにえりさが完全に猫化したのか、と。


…が。


「にゃーぐ」
「…お前かよ」

四つ足で、しなやかで、尻尾をゆらゆらさせて。
そう。それはまぎれもない、猫の姿。
いつまで寝てんだよ、と言わんばかりの
低い唸り声。
こちらを覗き込んでくる仏頂面は他でもない。
りおだった。

どうやらえりさは今、台所にいるらしい。
そちらの方から、食材を切る音や食器を出す音が
聞こえてきた。
朝飯でも作ってくれてるのかな。

安堵しつつ喉元をくすぐってやる。
意外にもりおは素直に身を委ね、
ブランケットの上に腹丸出しで
ごろりと横たわった。

「……」

こいつには俺はどんな風に見えてるんだろう。
居候、邪魔者。恋敵。
たまに『遊んでやる』相手。
そんなところか。わかんないけど。

まぁ間違いなく自分より下には見てるんだろうな。

ご主人様に身も心も溺れてる
どうしようもない奴 ってね。
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