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猫彼女。
第1章 cat.1
………。ん?
「…りおちゃん」
えりさが視線を、俺からずらす。
俺らから少し離れた床の上に鎮座ましますのは、我が家の三人(?)めの住人。飼い猫の、りお。
こいつは同棲前からえりさが飼っていた、2歳の雌猫。アメショーかと思ったら雑種。
美人さんだと彼女はいうが、俺には仏頂面のブサ猫にしか見えない。
そいつがゆらゆらと尻尾を揺らして、こちらをじっと見つめていたのだ。
「ご、ごめんね。お腹すいたんだよね…」
えりさは乱れたニットとジーンズを直すと、俺の腕の中からそそくさと抜け出してしまった。
そのまま食器棚下段の扉を開け、取り出されたのはキャットフードの袋。
パラパラと音をたてながら、こげ茶色の粒がりお専用の小皿を満たしていく。
「…いちゃついてるところを子供に邪魔された夫婦って、こんな感じなのかな」
「なーに言ってんのよ」
俺の言葉に、拗ねないの、とえりさは苦笑し袋をもとの場所に戻した。
「…えっと、私…着替えてくるね」
なんとなく白けてしまった空気。
えりさはそそくさと寝室へ逃げ込んだ。
閉められてしまった襖。
残されたのはお預けを喰らった俺と
お望み通りの食事を、無心で貪る猫。
…負けた気がするのはなぜだろう。
まあ…でも。
今思えばゴム切らしてたし、あのまま突っ走っていたら危なかった…かも。
…ありがと、だよな。…うん。
俺はりおの頭を優しく撫でてやった。