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ひととせの自由
第2章 すこやかパンダクリニック
しきせんせい。
果たしてようやくこちらを向いたその人は、、、意外にも優しげな…整ったお顔だった。あ…木10ドラマに出てたあの俳優に似てなくもない…?
毛先が無造作にあちこちを向いたシルバーアッシュの髪と、ノーフレームの眼鏡がよく似合って…って。え、いや、若くない??どう見ても河村さんと同世代っぽい。
「この子が例の看護師さん。ほら、あいさつして」
「!あ、わ、私、、、」
「へー、中村さんていうんだ?」
促され、自己紹介をしようとしたら。先に言い当てられた。え、やだ怖い。なんで??!
「そこ。名札付いてるよ」
「へっ」
先生が指差した先を見下ろして…納得。同時に、恥ずかしさで死にたくなった。視線の先、胸元にでかでかと縫い付けられた『3年2組 中村』。
私は普段、部屋着として高校時代のジャージを愛用している。…そのまんまの格好で今この場に突っ立ってたことに、ようやく気が付いたからだ。
だから田中くんもあんなにまじまじ見てたのか…。河村さん一行がウチに押し入ってきてから、怒涛の展開だったもんね。着てるものに気なんて回らなくても仕方な…いやいやいやいや!穴があったら入りたい…。
「なんか、楽しそうな子。よろしく」
「あ…」
にこ、と笑った四季先生は。ついさっきまでの痴態が幻だったみたく穏やかで…癒される雰囲気を纏っていた。
借金返済のためとはいえ…なんか…ここで、この人のもとで働くの…悪くないかも…なんて頭に咲き始めたでっかい花は、次の会話で根こそぎむしり取られる事になる。