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ひととせの自由
第2章 すこやかパンダクリニック
考えてみりゃ当たり前か。
借金返せなくなった女が送り込まれた場所とその主、そして送り込んだ張本人なんだから。まともなわけない…
一瞬でも『悪くないかも』なんて思った私、なんてバカなんだろう…(もうコレ何回目…)。
きっとここ、漫画とかでよくある『闇医者』だ。
患者はスネに傷のある者ばかり。違法行為、危険薬物、なんでもござれ。ああ、私はこれから、犯罪の片棒をかつがされるんだ。んでもって、何かあったら真っ先に切られるんだわ。
借金なんかするんじゃなかった。ばーちゃん、重ね重ねこんな孫で本当にゴメン…
「だから先生も頑張ってるんだもんね」
───と、心中ド修羅場なところに差し込んだ、河村さんの声。
先生も頑張ってる?あぁ、『お仕事』をですね…ハハ…
「お金返さないとならないから」
「?!」
意外な言葉。四季先生も「まーね」と屈託なく笑ってる。
え、なに?この人も債務者なの?ドクターなのに??
「この先生、大学病院での勤務医時代に、教授夫人と不倫した挙句その娘にも手出して母娘丼かましてね。追放されちゃったの」
「えっ」
「そうそう。で、慰謝料が払えなくて、ここで働くのを条件に光太郎くんちが肩代わりしてくれたんだよ。いや若気の至りとはいえ、我ながらバカだったなー」
……え〰〰……
なにそれ…いくら何でもエグすぎませんか…。ふたりは笑いあってるけどさすがに引…く所なんだろうけど、四季先生の外見を見れば…その…なんとなく、女性陣の気持ちがわかるような気がした…ような気がした。
「先生たち案外ウマ合うんじゃない?ね、田中くん」
「…ハイ」
私以上に空気(というかもはや壁)になっていた田中くんへ、河村さんが尋ねた。いきなり振られたって困るだろうに…と思ったけど、彼は目を伏せ頷いただけで、何の変化もなかった。
ていうか、ウマなんかあってたまるか。