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ひととせの自由
第4章 のべつまくなし
「でもさぁ、俺も感心してんだよ?ひととせちゃん」
腰掛けている丸椅子をくるくると回転させながら、河村さんは呟いた(ほんとこの人、いきなり子供っぽいことするから反応に困る。なので敢えて何も言わなかった。私えらい)。
「田中くんとも仲良くやれてるみたいだし」
「はぁ…」
「ね、弒髄珠(しいずんず)っていう、ちょい前まで関東全域牛耳ってた半○レ集団、知ってる?」
「えっ?いぇ…知りませ」
「今もう解体したけどさ。あの子、そこの副総長だったんだよ」
「んぇ"っ」
四季先生のお犬様、田中くん。
その忠実っぷりは、あの日のあの痴態だけでも充分伝わってきた。
『舐めて』
『もっとしてあげて』
『もういいよ』
四季先生が連れ込んだ(恐らく)見ず知らずの女性への、性的な奉仕。田中くんは全部従ってた。褒められれば更に頑張ってもいた。
なんで、そこまでするのか。できたのか。実は私、あれからずっと考えてたんだ。
でも、わからなくて。だからずっと見ていたんだ。普段の四季先生と田中くんの様子を。
しかし。
田中くんは四季先生より先に起きる。先に食べない。先に寝ない。
わかったのはこれぐらいだった(ただの関白亭主と貞淑妻…)
田中くんはなんで、そこまでするのか。できたのか。
謎のままなんだ。
…ていうか、なに。え?田中くんの過去すか?
半グ○集団の副総長?関東全域牛耳る規模の??
田中くんのあの半端ない威圧感と…ぶっちゃけちゃえばギャ○グ感は、『本物』だったからですかそうですか。
…だったらますますわからないじゃない。
なんでそんなおっかない人が、こんなとこで事務員と…『お犬様』やってんの。
「あの子、見た目が見た目じゃん。だからひととせちゃん、もっとビビって、萎縮しちゃうかなあって思ってたんだ。いやー、よかったよかった」
「!」
ケタケタ笑う河村さんを見て閃いた。
そうだ、この人に聞きゃいいんだ!
『オーナーだから』知ってるよね、きっと。
「あ、ああああの、河村さ」
「、もしもしー?今どこ?」
なんつータイミングの悪さ。こちらが声をかけたのとほぼ同時に、河村さんのスマホが着信を知らせ震えた。
遮る訳にはいかない。そんな度胸ない。
大人しく引っ込み、器具の再確認をしながら通話が終わるのを待った。