この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ひととせの自由
第4章 のべつまくなし
暦 直史。愛称は『なおくん』。
16歳でデビューしてから去年に脱退するまで、超人気アイドルグループ【annus(アンヌス)】のセンターだった。
爽やかなのに、愛嬌があって。童顔なのに、ふとした時に影のあるセクシーな男の表情も見せて。
さらに歌えて踊れて演技もできた彼は、脱退後、俳優へと華麗な転身を遂げた。
今期の木10ドラマにも出演中。ヒロインの相手役なんだけど、これがまた当たり役で、超格好良くて。
前住んでた部屋にはTVなかったから、毎週毎週断腸の思いで有料動画買って、喰い入るように見てたんですよ…ええ。
そんな『なおくん』は、私の──『推し』である。
あ〰も〰何?なんなの?ホントに同じ人類?
顔、ちっちゃ!脚、なっが!うちの彼氏みたいな香水ぶっかけの下品なやつじゃない、ふわっと香るめちゃくちゃいいにおい!!
過去、annusのコンサートで拝んだなおくんは、席の位置的に柿の種程度の大きさだった。それでも、超格好よかった。
そして今、至近距離で見る実物は…美しい!麗しい!!芸能人オーラが半端ない!!お、お金払うんでガン見していいですか…?!
興奮しすぎて魂すら持ってかれそうになる私を…冷静なもう一人の私が思っくそ蹴っ飛ばした。
────いやいやいやいや、ちょいと待ちなさいって。
ひととせ、一体アンタ何回ダマされりゃ学習すんのよ。
河村さん、言ってたよね?『顔いじった子』って。
『なおくんそっくりに顔いじった子』かもしれないじゃない。
そしたらただの一般人だ。まぁ河村さんが連れてきてるから、厳密に言えば違うのかもしれないけど…。
とにかく、今をときめく木10俳優様であるなおくんが、こんなとこに来るわけ──
「遅れてごめんなさぁい。監督とプロデューサーが、なっかなか離してくれなくってさぁ」
「あの人らしつこいからね。でも次の映画、主演決定おめでと」
───あったよ。