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ひととせの自由
第4章 のべつまくなし

どうしよう。手が震える。足が震える。
ていうか、全身が震える。

『推し』が目の前にいる。息して動いてる。喋って笑ってる。
ホントなら課金しないと(いろんな意味で)会えない人なのに。
冷静でいられる人なんかいるの?


「あ、紹介するね、なおくん。このこ、新しく来た看護師さん。中村ひととせちゃんだよ」
「えー?看護師さん?」

! !こ っ ち 見 た ! !

…うわうわうわうわ、睫毛長い!!毛穴がない!!
女の私より遥かにお肌がキレイ(あっれ、目から汗が…)!!

なおくんと私の間。距離にしたら大体2mくらいだろうか。それでも超ウルトラ至近距離。心臓がうるさい。息できない。

どうしよう。手が震える。足が震える。
ていうか、全身が震え……


「んー。悪くないけど、60点てとこかな?」
「へッ?」
「ま、せーぎ兄ぃの好みではナイわ。安心した♪」


頭のてっぺんから爪先まで一瞥した上に、私の顔をまじまじと眺めたなおくんは河村さんと笑い合った。

…な、なに?なにが60点??ガン見された顔面、一瞥された全身…あ、品定めされたんすか?私。そしてはじき出されたのが60点すか。…微妙だな!

いや待ってよ。いくら今をときめく木10俳優様だからって、さすがに失礼じゃない?!と憤った女のプライドは。
なおくんの生笑顔に癒され、秒でどうでもよくなった。
『推し』の笑顔に勝るものは無いのだ。『推し』尊い。
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