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ひととせの自由
第4章 のべつまくなし
あの木10ドラマ俳優に似てなくもない。──それが、私が抱いた四季先生の第一印象だった。
あの木10ドラマ俳優。もちろん、なおくんのことである。
結果的にそれは間違いじゃなかった。ていうか、正解だった。
……ていうか…似てて当たり前だった。…ていうか……
「え"え"え"??!きょきょきょ、兄弟?!?」
「うん、そーだよ。なおは僕の弟」
「ちょっと60点、アンタうっさい」
笑顔でしれっと肯定した四季先生と、対照的に煩わしそうなお顔(でも超可愛い)で悪態をついてきたなおくん。
え?借金返済のために放り込まれた先のドクターが、推しの王子さまならぬ、推しのお兄様?何このトンデモ展開。頭が着いてかないよ…。
そしてそんな私を置いてけぼり、河村さんはご丁寧に解説を続けてくれた。うん、安定のマイペース☆(もうヤケくそ)
「四季 正直(まさなお)。なおくんの本名ね」
「え、"暦 直史" じゃ…」
「それ、芸名だよ。ちなみにこの子公式年齢は21ってなってるけど、ホントは28だから」
「ちょっとオーナー!なにアタシに無断でぶっちゃけてんのよぉ!」
「で、中身はこんな感じ」
──こんにちは、暦 直史です。皆さんの応援のおかげで、僕は頑張れています。いつもありがとうございます!──
脳裏に蘇ったのは、TVで初めて見た、あの日のなおくん。
可愛くて、でも精悍な男性らしさもしっかりあって、誠実さも滲み出てて、一瞬で堕ちた。あの日からずっと、彼は私の『推し』だ。
なのに。頭の中は事実と現実が大渋滞で。
私はただ、突っ立つことしか出来ません。ハハ…
「ひととせちゃん、仕事して」
「!あっ、はい!すみません、先生」
呼び掛けで我に帰り、準備しておいた医療用ワゴンと共に、なおくんのいるベッド脇に立つ先生の後についた。
あああああ。チラッと目線を脇にやれば、そこには無防備に目を閉じ横たわる『推し』の姿。年齢サバ読みしてても『推し』はやっぱり可愛い。『推し』は愛くるしい。『推し』は尊い。も〰だめ。やばい。萌え死にしそう。…ぎゃ!目を開けた!
「なにジロジロ見てんのよ60点。ちゃんとやんなさいよ」
…たとえ中身が女子(しかも毒舌系)だったとしても!
なおくんの言う通り、ちゃんとしろっ!ひととせ!
私は看護師。今はとにかく、職務を全うするのよ!