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ひととせの自由
第4章 のべつまくなし
「ガーゼちょうだい」
「はい」
「ありがとう。…なおー。終わったよ」
そんなこんなで、無事にメンテナンスは完了。
とは言っても切った貼ったの類はなく、四季先生自らが用意していた注射を、なおくんの右こめかみ辺りに打っただけだった(中身がなんなのかは不明。多分聞いてもはぐらかされるんだろうなぁ…くわばらくわばら)。
「ついでに疲労回復点滴もしとくよ。ひととせちゃん、頼むね」
「はい、先生」
「えぇ~?せーぎ兄ぃがしてくれんじゃないのぉ?」
「大丈夫、ひととせちゃんの方が上手だから」
心底不服そうななおくんをあしらい、お大事にねー、と軽ーく言い残して。四季先生は診察室へと戻って行ってしまった(さりげなく褒められた…!ヒャッホウ♡)。
しかし実弟だというのに、また随分あっさりしたもんだなぁ…。男兄弟なんてそんなもんなんかな?
あ"ッ、まさかこれからまたどっかのお姉さんとランデヴーとシャレ込みませんよね?…等々下衆の勘繰りしつつも。
残された私はただ職務を全うするだけなのである。さて、点滴の準……ん?点滴?
ってことは…な お く ん に 触 れ る ! !
「アンタほんと上手いの?トチんないでよ?60点」
憎まれ口もなんのその。脳内ドーパミン大放出中の私には全く効きませんぜ、ヘヘッ。それでは──いざ!
「しッ、失礼しまッす」
「左にして。アタシ右利きだから」
「は、はい!かしこまりやした!」
さて──初めて触れた『推し』の素肌は。
それはそれはもう、シルクみたいに滑らかで、瑞々しくて。
そしてその感触は、柔らかいのに固く締まって。中身は女子(しかも毒舌系)でも身体は鍛えられた男性のそれで。
たまらん。鼻血出そう。冗談抜きで萌え死にしそう。
いろいろあったけど生きててよかった。
しかも血管も超わかりやすいタイプ(『推し』は血管までスタイリッシュだった…尊い)。こんな雑念だらけの心中でも、普段通り、いや、普段よりスムーズに準備完了できたのだった。
「30分くらいで終わります。途中気分が悪いとかあれば、遠慮なく教えてくださいね」
「ん、りょーかい。…せーぎ兄ぃの言ったとーりだったわ」
「え?」
「アンタ、上手。全然痛くなかった。ありがと」
『ありがと』──『推し』が私を見て言った。
なんなんだ今日は。真面目に私、死ぬのか?