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ひととせの自由
第5章 Ghost White
「あ、あのぅ、先生…」
「ん?なーに、ひととせちゃん」
恐る恐るの呼びかけに、笑顔(あああやっぱりなおくんに似てる…つらいけどキュンキュンしちゃうぜ…)で振り向いてくれた四季先生ですが…騙されませんよ私は。
そもそも一体ワタクシめは何のためにここに居たのでしょうか??
「ウチの弟のせいで、ひととせちゃん落ち込ませちゃったから。ちょっとでも元気になってくれればなぁ、と思って」
「ゑっ」
なんですと?え、つ、つまりこの異常痴態は 私 の た め ってことすか?これっぽっちも嬉しくねー・・・
「ひととせさん」
「は、はひっ?!」
刺し込まれたのは冷たいお声。
その主はもちろん・・・田中くんである。
「先生のお心遣い、伝わりませんか」
「え"ッ!いやッ、あのッ、そのッ」
「だとしたら自分のせいです。…申し訳ありません」
そう言って彼は目を伏せ、頭を下げた。
・・・いやいやいやいやいや、アナタ何も悪くなくない?!?
「うーん。ちょっと残念だなー、田中くん」
困り顔で苦笑する四季先生。
いやいやいやいやいや!!アナタは何を言ってんの!?!
ちょっ…ほら!田中くん、お顔に陰が射しちゃってるじゃん!
「あ"ッ、あのッ、ありッ、ありがとうございましたッ!!私ッ、も全然、元気ですのでッ!!」
こんな状況、こう言うしかないじゃないか。
間接的に誰か(しかも無実の人)を貶めるって、推しに面と向かって『キライ』と言われるよりキッッついぞ。
「そ?だってさ。良かったよ、田中くん」
「…はい」
四季先生の言葉に、田中くんの表情から陰が消えていった。
ほんと、どこまでご主人様に忠実なお犬様なの。
・・・なんかなー。
もしかして私、河村さんにからかわれたのかな。
田中くんが…その…半○レだったとか、副総長だったとかは全部作り話で、実は家族を養うために借金しちゃって、返済のためにここで働いてる苦労人…とかじゃないんだろうか。ていうか、むしろそうであって欲しい。お犬様やってる理由は…知らんけど。
かくして私のそんなささやかな期待は、例によって例のごとく、この後アッサリ消え去るのであった。
「そうそう。今日はもうひとつ、お楽しみがあったんだよね」