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ひととせの自由
第5章 Ghost White
おたのしみ。…この先生が言うと全っ然ワクワクしない。
あ、たこパとか鍋パとかスイーツ食べ放題とかなら話は別。でも絶対そんなわけないしなぁ…ハハ…
その時だった。部屋のドアがノックもなしにいきなり開けられ、テンション高めの男の声が飛び込んできた。
「はいおつかれー。オーナーですよっと」
「ぎゃああああっ」
御大登場。・・・河村さんである。びっくりし過ぎて腹の底から叫んじゃったよ。え?今夜来るなんて聞いてませんよ?てか、二日前に(なおくんと)来たばっかですよね??え、何しに来たのこの人…
「何言ってんの、ひととせちゃん。今日は楽しい集金日だよ」
・・・イヤだから私何も言ってませんて・・・ って、集金日?!
わ、私ここ来てまだ日にち経ってないし返済するお金なんて無…
「あー、キミはまだ無し。センセーは準備できてる?」
「光太郎くんおつかれー。はいこれ」
私を軽くあしらいながら、河村さんは四季先生が机から取り出した茶封筒を受け取った。…げ、現金で納めてるんだ?…なんか、我々が債務者だってことを改めて認識させられるなァ…。
「はいどーもー。じゃ、来月もガンバッテネ☆」
にこ。とまるで少年のような笑顔で労いの言葉をくれた河村さん。用事も済んだし帰るのかと思いきや。今度は四季先生の方から話が振られた。
「"アレ"は?オーナー」
「ん、用意してきたよ。おーい」
河村さんは、診察室の外で待機していたらしいお供の黒スーツ様たち(なんか久々!)に何やら合図した。
するとお供の黒スーツ様たちは、こちらに向かって何かを放り込んだ。
「?!」
ドサッ…という音と共に、私たちの足元に横たわった大きな塊。な、なにこれ?粗大ゴミ??まじまじ見つめた私は…「ヒッ」と小さく悲鳴をあげた。
ゴミだと思った『何か』は。
後ろ手に縛られ、片足がおかしな方向に折れた…人間だったから。
それだけじゃない。この『何か』は。
「れ…、れ…、れ…」
──ひととせ、これに名前書いてハンコ押して!頼むよ!俺、お前しか頼れないんだ!
「れん、や…」
私に借金おっかぶせてトンズラした彼氏。…蓮哉だった。