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ひととせの自由
第5章 Ghost White
「──とまぁ、冗談はこれくらいにして。真面目にどうなの?」
一体何処から何処までが冗談だったのか。皆目見当もつかないけど、河村さんはそう切り込んできた。
「そもそも何で君みたいなフツーの女の子が、こんな外道とくっついたのさ」
「あ、それは僕も興味あるな」
「…それは…」
河村さんと、何故か乗っかってきた四季先生に言われ、改めて思い返してみた。蓮哉とのなれそめを。
───出会いは、運命的。
蓮哉は、上京したてで右も左もわからん私に声掛けてくれて、『なんか君、ほっとけないね』って気遣ってくれたんだ。
んでそのまま彼の勤め先のお店に行って、『これからの活躍を祈って!』って超高いお酒飲ませてくれて。
閉店後は私のボロアパートまで送ってくれて。そこでなんと『オマエのこと、好きになった』て言われちゃって!!!
そのまま同棲が始まったんだ…──
「うーん。絵に描いたような騙されっぷりだね、光太郎くん」
「うん。俺この子のことバカだバカだと思ってたけど、ここまでバカとは思わなかったよ、せんせー」
「……ぷ」
人に話しさせといて、ディスり頷き合う闇医者とオーナー。
前から思ってたけど、この人達超仲良しだな!!
ていうかそばで仁王立ちしてる田中くんも、今ちっちゃく吹き出したの、私は見ましたからね!!
「つまり三下ホストのキャッチにまんまと引っかかって、高い酒カケで飲まされて、家に転がり込まれて貢がされて、挙句借金背負わされて、トンズラこかれたんだね」
私の想い出を三行でまとめてくれた河村さんは、うんうんと頷き、爪先で蓮哉の背中辺りを小突くように蹴った。
「ゴメンゴメン、好きかどーかなんて聞くまでもなかった」
「…あ…、でも…っ」
いや確かに全くもって仰る通りなんですけど。
ぶっちゃけ『好き』?と問われたら、微妙なんですけど。
ここで私が出した答えで、一人の人間の運命が決まっちゃう訳でしょ?
例え借金背負わされても、40度の熱出してんのにご飯作らされて『まずい』って捨てられても、機嫌悪い日はひたすら無視されても。さすがに・・・ねえ?
好意的な答えを返したら、億万が一…いや、一兆万が一、酌量してくれるかもしれない!!
そんな淡い期待と色濃い勇気を抱き、いざ!と意気込んだら。
鋭い声が差し込まれた。
「またそうやって、"いい子"になるんだ?」