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ひととせの自由
第5章 Ghost White
『お前、ただの浮気相手だから』
あれは忘れもしない、高二の冬。
家でマンガ読んでたらかかってきた、L1NEのビデオ通話。
相手は当時付き合ってた、ひとつ上の先輩。
通話開始直後言われたのがこのセリフだった。
ご多分にもれず初彼氏。告白されて、初えっちも捧げて、大好きで大好きで、それこそ私、犬っころみたいに懐いてた。なんでも言うこときいてたし(ん?なんかデジャヴ…)。
かっこいいだけじゃなくて、『勉強に集中したいから』っていう真面目さもあって、こちらからの連絡はほぼスルー。
だから顔見て話せるビデオ通話なんてそれどんなご褒美?状態なわけで。喜び勇んで受けたら…先輩の隣に、般若顔の女の人がいて。
まあ要するに…そーゆーことだったわけである。
先輩にとって私は、なんでも言うこと聞く便利な浮気相手。それが本命彼女(なんと社会人のおねーさまだった…)にバレて、許してもらう条件がこの『お前は浮気相手』宣告だったらしい。
私はそのとき…謝ったんだ。彼女さんにも、先輩にも。
『すみませんでした』って。
なーんも知らなかったんだから、ある意味私も被害者…だったんだよね。泣いて怒って喚いても仕方ない状況だったのに。
先輩の目が思いっきり『助けて』って言ってたから。
───って、なんで今こんなこと思い出したんだろ。
んあぁ、あの時とほぼ同じ状況だからか。
ヤヴァさでは今の方が遥かに上だけど。
「また本心じゃない事言おうとしてるでしょ、ひととせちゃん」
相手のために。…と。再び差し込まれたる鋭い声。
よもやよもやその主は……四季先生だった。
「え…、いや、先生何言って…」
「それが君の処世術か知れないけどね、バレてる。それに」
アハハ…と引き攣った愛想笑いで誤魔化そうとしても。今の四季先生のお顔には…いつもの笑顔は、なかった。
「大切にされないことに慣れちゃダメだよ」
──みんな聞いて聞いて??私、大発見したの!!
本物のイケメン様って、無表情が一番綺麗でね……
一番怖い!!!私今、蛇に睨まれたカエルの気持ちがわかる!
──いやいやいやいや、何言ってんの。みんな って誰よ。
私がカエルの何をわかるのよ。
恐怖とか混乱とかなおくんとか蓮哉とかその他諸々のせいで、私の思考回路は遂にバグったようだった。