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ひととせの自由
第6章 熊猫首領。

「たっ…たたた田中く、んの、妹さ…んは、その後…?」

河村さんに促されるまま斜向かいの診察台に腰を下ろし、なんとかそれを聞くことができた。
頼むから少しでも幸せに暮らしていて。そう祈りながら。

「トゥエンティちゃん?うん、元気だよ。今はうちの系列店の女子寮に住んでて、そこから学校通ってる」
「学校…」
「看護学校。小児科の看護師さんになりたいんだって」


目頭が燃えた。

よかった。妹さんは未来に向かって歩いてた。
田中くんがお犬様になる道選んでまで、救いたかった妹さん。

夢のために学校行って勉強して、女子寮のおねーさん方とも、仲良く楽しくやっているらしい。よかった。本当によかった。

カッサカサに乾きかけていた私の心に、田中家の兄妹愛は染み入るのだ。

しかも看護師を目指しているなんて…!
なんかもう、何も言えねぇ。胸いっぱい。
すごい、すごいよ……本当に。






──しかし、こう言っちゃなんだけど。
四季先生、鬼だな。

さすがにボランティアでやれ、とは言えないけど。
あそこまで追い詰められた人につけこむなんて。

ドクターになれた優秀さに加え、見目麗しいご尊顔。
女性なんぞより取りみどりの選び放題。順風満帆。そんな人生を送ってきただろうこの方には…わかんないんだろうなぁ…
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