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ひととせの自由
第6章 熊猫首領。

「あとはさー、試したかったんだよ」

ちょっと仕事していい?と断りを入れ、河村さんは懐からタブレット(仕様から察するにiP〇d?)を取り出した。
そして今さっき四季先生から受け取った茶封筒を開封すると、逆さまにして軽く振る。

えっ、アナタそれ、現金が入ってるんじゃないの??
そんな事したらバラバラとこぼれ落ちるんじゃ…とハラハラしたけど心配ご無用。中から滑り落ちてきたのは、小さなUSBフラッシュメモリだった。

それをiP〇d?に挿し込み、片耳にワイヤレスイヤホンを装着して。視線は画面のまま、河村さんは話し続けた。

「"大切なもの" のためにどこまでできるか」
「……」
「自分より大切なものがある人間って、強いからさ」


俺はそういう人間と 『仕事』 したいんだよ。


河村さんはそう言い締めてこちらを見た。まっすぐ。
怖気付いた私は反射的に視線を逸らしてしまう。

その時チラ見えたiP〇d?の画面には…白衣を着込んだ田中くんと、ナース服の…さっき拉致られたおねーさま(ヒフミちゃんさん、だっけ?)の……やたら見覚えのあるおセッセ動画。 な ん じ ゃ そ り ゃ ? ! ?

「コレは一部のオネーサマ方に売るの。ん、キレイに撮れてるね」
「合格?今回カメラワーク気を遣ったからねー」
「せんせーマジで医者辞めてそっち系いく?才能あるよ」

相も変わらずにこやかーに盛り上がるおふたり。
なんと…あの異常痴態の最中、私の背後と斜め右前の棚の書類の間と、ベッドの下に、定点カメラが仕掛けられていたんだそうだ。

聞くところによるとコレも借金返済の一環だそうですよ、奥さん(誰?)。
更に更には、四季先生自らもご出演なさることもあるそうで。先生がやたらときれいなおねーさま方を連れ込んでいたのは、そーゆー訳だったのだ。……ん"?!

「ぇ"?!ちょ、ちょっと待ってくださいよ、じゃこないだの私のアレも撮られてんですか?!?」

私のアレ。アレは…アレである。いつぞやのお昼休み、私が昼食のおうどんちゃんを犠牲にしてまで頑張って、四季先生の指示通り見知らぬおねーさんに文字通り『突っ込んだ』、あの異常痴態。

何処のどなたに流されるか知りませんし、私にゃ権利も拒否権も無いのは百も二百も承知ですけど!あんなのもし私の親類縁者…特に、ばーちゃんの目に触れたら!!
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