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メンズミーティング
第4章 はじめまして。

【一年前/盛夏】

──ああ、体が動かない。暑い。

俺どうしたんだっけか。えーと…
あぁ、思い出した。



明け方帰ってきた直後に便所で血ゲロ吐いて、寝床行こうとしたらコケて、廊下に倒れ込んで俯せ。それきりだったんだ。

ここんとこ忙しかったし、ろくなもんも食ってなかったから。ついに限界迎えたか。あぁ連絡してねぇ…就職後初の遅刻だ。

なんて言ってる場合じゃない。動けない。これやばいやつだ。今いる場所から玄関ドアまでは2mもないのに、這う気力もない。

携帯は充電切れ。誰かが訪ねてくる予定もない。付き合ってた女とは先週別れたばかり。

こういう時、どっかのボンクラの特殊能力は使えないものだろうか。無理か。ああそうか。

更に暑さを増してくる室内。…このまま死ぬのもアリか。なんてぼんやり思っていたら。



「──麗!麗いるの?!開けなさい!」
「!」

突然、玄関ドアが外れそうな勢いで叩かれた。同時に響く、聞き覚えのある耳障りな高い声。突っ伏したっきり動かなかったはずの頭が上がったのには、自分でも驚愕。刷り込みは恐ろしい。…姉貴だ。

「入るわよ!!」

いくらこの1DK+ロフトの間取りが気に入ったからって、オートロック無しなんてやめときゃよかった。もう遅いけど。姉ちゃん鍵開けようとしてるよ…って、何で合鍵持ってんだよ。渡した覚えねぇぞ。

かくしてドアは開けられ、けたたましいヒールの音と共に姉貴は中に入ってきた。
この女ドアチェーン引きちぎったのかと思ったら、単に付け忘れていたようだ。俺相当疲れてたな…

まあとりあえず、死なずには済んだ。
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