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メンズミーティング
第4章 はじめまして。
「あんたって子はどこまでバカなのよ!音沙汰ないと思ったら案の定死にかけてるし!ほら、飲みなさい!」
足を掴まれて引きずられ、冷房の効いた部屋に放り込まれた。生き返る…。そして渡されたペットボトル入りの水。情けないかな力が入らずキャップが開けられない。
「ね、姉ちゃん…開けて…」
「っとにもー、しっかりしなさい!」
頭叩かれつつ開封されたボトルを受け取り口をつける。乾いた体に水分がしみる。何だこれめちゃくちゃうめーな。今度箱買いしよう。
「ったく。部屋汚いしヤニ臭いしろくなもの食べてないみたいだし。麗あんた、仕事は真面目にやってんでしょうね?」
「うん…」
──もう辞めるよ。自分が所謂『リーマン』には向いてないってことが、よくわかったから。
薬のことを知り尽くしたくて薬学科行って、なんやかんやで薬剤師の資格とって。
勤め人の経験もしておきたかったから、卒業後調剤薬局員に就いておよそ5ヶ月。そろそろ潮時かなとは思ってた。
『副業』を『本業』にする手筈も整ったしね。全て自力でやっていく。保証も後ろ楯も無いけど、多分そっちの方が性にあってる。まあ今は言わないけど(面倒臭い)。
「その仕事先から、あんたが来ないって連絡がきたの。あんたまた、変な女に付きまとわれてんだって?何かあったのかもって、局長心配してたわよ」
薬局は姉貴の職場の近所。しかも局長と姉貴は顔見知り。だからの来襲か。
ちなみに変な女というのは、毎回処方せんと一緒に、記入済みの婚姻届を持ってくる女のこと。こないだは母親も連れてきた。気にもしてないけど。
「どーやらそれは関係ないみたいだけど。医療従事者のくせになに不健康な暮らししてんのよ。んっとバカなんだから!」
グチグチ言いながら姉貴は煙草に火を着けた。
喫煙してる時点であんたも同じだろ…と言いかけたがやめる。あぁ、そんなことより結局無断欠勤だよ。
今日は土曜だから営業は昼まで。こんな時間だし、多分もう誰もいない。
いくら辞めると言っても無断欠勤はないよな。月曜日詫びなければ…あぁ面倒くせぇ。
心配してもらっといて罰当たりなこと考えてたら。姉貴がまた突拍子ないことを言い出した。