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メンズミーティング
第5章 王子 マキアート
『助けて』『何でもする』
そいつがアホみたく繰り返す
いわゆる『命乞い』の言葉。
いい年こいたジジイが
びーびー泣き喚いてる
涙と鼻水でずぶ濡れな
きったねぇ見苦しい顔。
可笑しくて可笑しくて堪らない。
逃げても逃げても追ってやった。
顔面を殴る。腹を撃つ。
倒れ込んだ全身を蹴る。
『殺さないで』
命乞いは哀願へと変わり
それもやがて静かになる
一つの命が終わりを遂げた。
他の誰でもない俺によって。
俺がそいつの全てに終止符を打つ。
俺がそいつの全てを奪う。永遠に。
それが何にも代え難い快感だと
自覚したのはいつだったろうか
──またやったのか、マキアート
ふいに甦った俺のなかの古い記憶。
俺の手の中には殺したばかりの鼠。
──無駄に殺すのはよせ
──生きているんだから
それを見つけた兄貴達の呆れた声。
双子の兄貴達は異口同音が大得意。
同じ顔で同じような内容の説教。
一度も手をあげられた事はない。
最後は決まって頭を撫でられる。
それが忌々しくて仕方なかった。
「……」
12も離れていれば当然かもしれない。
俺は常に奴らよりも下。何をしても
敵わず劣っていると見なされるのだ。
平和ボケした親父譲りのお花畑っぷり
しかしそこはいずれ国を治める立場
上の兄貴も下の兄貴も至極優秀だった
品行方正、清廉潔白、温和怜悧。
何しても俺に勝ち目はなかった。