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メンズミーティング
第9章 ひとのふりみて。2
その日は久々に落ちていた。
上手くいっていた……いや。
いくはずだった商談が破談になったから。
『なんか気に入らないんだよね~。村上くん』
先方(俺より若いやつ)曰くそれが理由。
なんかってなんだよ。意味わかんねぇ。
しかしこの世界。結局最後に決め手になるのは
『好きか嫌いか』だ。実際俺もそうしてきた。
だから媚を売るのも大事な仕事。
持ち上げ利益ちらつかせ取り入って
中から喰い散らかしていくのがお約束。
『腹になんか黒いもん持ってるし』
見透かされ、先制されたのなんていつぶりだ?
いや、マジで久々。
解せない。何が不足だった?仕立ては完璧だった。…分かってんのは、ただただ損失はでかいってこと。
更に追い討ちになったのは、先方に手回しされ万が一と思って掛けていた保険分までもが、ことごとく潰れていたこと。
正真正銘の八方塞がり。ああ、どうするかな…
「…ただい」
「すごーい!!お店みたいですね!」
「すっげー!!マジで作れんだな!」
鬱屈したまま帰宅し、玄関開けた直後。
飛び込んできたのは賑やかな男女の声。
鈴転がした様な可愛い可愛いあの子の声と
やたらデカくて耳障りなボンクラのダミ声。
そしてなにやら香ばしい匂い。
胃袋が騒ぐまま誘われるまま
匂いの出所である台所へと向かった。
「あ…おかえりなさい!!」
弾けるような極上の笑顔で迎え入れてくれたのは、もちろん俺の大事な子(エプロン姿かわいい)
「オイ見ろよすげーぞこれ!!」
と、見飽きた通り越してもう見たくもねぇ野郎。謎なハイテンションのこいつが指差した先には…
「…たいやき?」
そう。ほかほかと湯気をたてる
二匹のたい焼きが皿の上にはあった。