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メンズミーティング
第22章 ウチで一番殴られてた子は。
一昨日入隊したばかりの新人衛生兵・ナノ。
我が軍最高位の軍医総監殿の、お騒がせ次男坊。
総監ご自慢のご長男、つまり実兄を半殺しにした
それはそれは綺麗なお顔をしたおぼっちゃまくん。
ま、それを知ってるのは隊長と僕だけ。何でかって?
僕は君のパパには昔から『お世話』になってるからね。
入ったばっかで緊張してるんだろうけども
愛想もクソもない、無口で可愛げ無い坊や。
それが45部隊員の抱いた印象だったんだけど。
質問があるなんてやる気あるな。偉いじゃない。
隊員たちの間にそんな感心ムードが漂った直後。
「…もう、いいですか?話、長いです」
わーい。
緊張感も期待感もへったくれもなかった。
ほーら。部隊長さん、無表情だ。
あれ、ブチ切れてる時の顔だよ。
あの人普段紳士風吹かしてるけど、
ナメた態度取る奴嫌いなんだから。
────!!
部隊長が無言でナノに近付いた直後
響き渡った重くて鈍い、いやーな音。
あーあ、おぼっちゃまくん吹っ飛んだよ。
──しかし、このときの部隊長さんは
怒りよりも心配の方が勝ってたんだよね。
その証拠に滲み出てたよ。ブライトさん。
『こいつは俺が何とかしなければ』って。
・・・で、一年後。
ウチで一番部隊長に殴られてた子は。
部隊長さんが厳しく優しく根気強く接し続けた結果
鉄拳制裁の中に込められた愛情にしっかり気が付き。
まだまだ一人前とは言えないまでも
立派な『衛生兵』へと成長しましたよ。
すごいね。
嫌な予感が現実のものとなり、僕らの国が
隣国のバカ王子に蹂躙される事態に陥っても
ウチで一番殴られてた子は
僕らの大切な女の子を、一緒に護ることになるんだよ。
部隊が解散するその日まで。