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ヒミツリ。
第1章

「ぁ…っ、…んっ」
「はは…圭吾すげー可愛い」

揶揄する物言い。男に『可愛い』は褒め言葉じゃない。しかも今は快感にほだされている真っ只中。アへ顔晒け出してるんだから。

「…んッ!」
「…橙也くんだって可愛いよ?顔も声も」

お返し、という訳じゃないが。手が覚えてしまった彼の好きなやり方で刺激してやる。カリ首を少し強めに握り小刻みに動かす。それが彼の好きな動き。…ほら、今の顔、凄く厭らしい。

「ふ、…っ、あ…」
「…ん…、う…っ」

僕らはセックスはしない。反り勃った互いのそれを、擦り付けあいもしない。それどころかキスすらしない。

僕らは手コキされるのが好き。そう
僕は彼の、彼は僕の 『手』が好き。
手だけでいいんだから。

「あ~…やべぇ…圭吾、超気持ちー…」
「…橙也くんが先にイキそうだね?…っ?!」
「…圭吾が先に決まってんだろ!」

橙也は負けず嫌い。彼にも熟知されている僕の弱味を文字通り握られてしまう。扱かれつつ指の腹での先端への愛撫。これには敵わない。

「…っ、橙也く…!」

くちゅ、くちゅ、と粘液が絡み合う音が、頭の芯からとろけそうになる感覚に拍車をかける。

強張る下肢。荒くなる呼吸。高まる射精感。
そろそろ限界…と思った矢先。

「…俺もイキそ…」

先に音を上げたのは橙也だった。さっきの威勢は無理したものだったな。だが僕は揚げ足取りはしない。登り詰めればいい。僕の手の中で。

「僕も…イく…っ、橙也…っ」
「…!」

吐き出されたそれぞれの白濁は指の隙間を抜け、13枚目のシーツを汚してくれたのだった。


───────────


「L1NE?」

汚れを払拭していた最中。枕の脇に放置されていた橙也のスマホが震えた。手に取り確認した彼は…恐らくスタンプでも送ったか。画面を2、3度タップしただけでそれをポケットに入れた。欠伸しながら。

「ん。“圭吾くんに迷惑かけるな“って」
「はは、よくわかってるね」

手早く身仕度を整えた橙也はスーツを着込むと、玄関に向かって一直線に歩いていく。そして靴を履きながら言うんだ。「また来るから」と。僕はそれに小さく笑って頷き、いつもの台詞を口にする。

「奥さんとお嬢さんによろしくね、橙也くん」
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