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BeLoved.【蜜月記】
第12章 敵は××にアリ?!
「っあ"〰〰〰〰、マジ最悪だわ」
あっという間に時は流れ、その日の夕方。
夕食の仕度をしていたら、玄関からドアの開閉音と共に、とてつもなく苛立った声が飛び込んできた。
「っ、おかえりなさいませ、流星さ…ま"ッ?!」
「あー、ただいま」
何事かと飛び出したら。声の主がスーツの上着を脱いでいた。
それだけなら普段の光景。なのにわたしが変な声を上げたのは……彼が全身濡れねずみだったから。
髪もワイシャツもぐっっしょりと、肌に張り付いている。慌てて洗面所からタオルを一掴みし駆け寄った。
「ゲリラ豪雨!帰りちょっと泳いできたんだけどさ。車まであともーちょいってとこでドカ降られてこのザマ。ありえねーよな」
「わ…大変でしたね…って、何してるデスカ?!」
吐き出される毒と、タオルで髪や素足を拭う音を背中で聞きながら。受け取ったぐしょ濡れの上着(重い…)をコートかけに掛けて振り向いたわたしは…またまた変な声を上げた。
彼がワイシャツやスラックスまで脱ぎ始めたから。
「げげげ玄関ですよ!?」
「は?だって廊下汚したくねーじゃん。おまえの手間増やしたくねーし」
「…!」
「悪り、これ後頼むわ。俺シャワー浴びてくる」
濡れた衣服一式は三和土に。きちんと畳まれたタオルはシューズボックスの上に置いて。下着一枚姿で廊下をぺたぺたと歩いてゆく彼。…相変わらずなマイペースさと、垣間見えた気遣いが嬉しくて。その背に視線を向けたわたしは……叫んだ。
「り"…ッ、りり、流星?!?」
「おっ!ついに呼び捨てる気になったか」
すみません違います。嬉々として振り向いた彼の、水泳で鍛えられた綺麗な背筋。…は今は置いておいて。
胃の裏あたり?の位置に、大きくクッキリと、色濃く刻まれていたのは…青アザ!!
「あー、コレ?プールでも泳ぎ仲間のおっさんに"有栖川くん、何それ?!"てツッコまれたけど、大したことねーよ?」
「その状態で泳いだんですかアナタ!!」
「つか、今結構マジで寒いから、もう行っていい?」
「、じゃあお風呂で詳しく聞かせ」
「ひとりになりてーんだけど」
そう言い退けられた上に、鋭い瞳で見返されてしまっては。
引き下がるしかなくて。
釈然としないものを抱えつつも、彼がドアを閉ざしていくのをただ眺めることしかできなかった。