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BeLoved.【蜜月記】
第14章 そういう男。2
「へ?」
顔を向けた先には、通路を挟んで隣のボックス席、わたしの斜向かいに腰掛けた男性。
大学生くらい?かな。若い人。雑誌の読者モデルさんみたいな出で立ちで、わたしと同じく、4人掛けの席に一人で着いて、テーブルから身を乗り出す勢いでこちらを凝視している。…笑顔で。
「やっぱりそうだよね?久しぶり」
しかしわたしの頭の中は疑問符だらけだ。
…誰??この人…
…ナンパ?…は、ないか。わたしなんかにありえない。
あ、誰かと間違えてる?…それも違うか。だってこの人、わたしのことを名字で呼んだ。それに、「久しぶり」って。
「…。あの…??」
「え、オレのこと忘れちゃった?まー、仕方ないか。3年ぶり?くらいだしね」
男性は今度は苦笑した。…ん?この顔には見覚えが…
──あ!
「思い出した?」
蘇ったのは、当時の記憶。
わたしがまだ高校生で、ファミレスでアルバイトしていた頃。
この人はその頃出会って……
「…ゆきや、さん…?」
「正解♪」
わたしが生まれて初めて、お付き合いした人だ。
─────────────☙
浅葱 倖哉(あさぎ ゆきや)。
年齢はわたしよりひとつ上で、わたしが入った一年後に、短期間のアルバイトとして入ってきた。
当時、わたしは高校二年生。
倖哉…さんは、中学を卒業後、高校へは行かず、いくつも掛け持ちで仕事をしている人だった。『やりたいことを探してる』からって。
そんな、何処と無く浮世離れした雰囲気と、人好きのする顔立ちと性格。入店した時点で既にいろんな職種を経験していたから話題も豊富で、たちまち人気者になった。
だからこそ、告白された時は信じられなかったんだ。
なんでこんなわたしなんかに?からかってる?って。
それをまんま言ってしまったら、あの苦笑で返されたんだっけ。「本気だよ」って。