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BeLoved.【蜜月記】
第14章 そういう男。2
「変わったね」
「?」
お互いの簡単な近況報告や、たわいもない思い出話やなんかをしていたら、唐突に言われた。
何のことかわからなかったけど、倖哉さんの前にあるお皿を見て察しがついた。
「あ…、食べました?スイーツ!わたしたちが居た頃より、もっと美味しくなってましたよね!」
「違うよ…。オレが言ってるのは、キミのこと」
またあの苦笑。…なんだろう。それを見ると、懐かしさと同時に、胸の奥がツンと痛むんだ。
「肩に変な力入ってない」
「!」
──思い出した。何で胸が痛むのか。
お付き合いしてた、とは言っても。
実際は、倖哉さんの雇用契約期間だった3ヶ月程度。
その間は一緒に帰ったり遊んだり、知らない事を教わったり。
毎日楽しかったけど…わたしいつも何処か、頑張ってた。
秘かに憧れていた人が、生まれて初めての『彼氏』になった。その現実に舞い上がって、いっぱいいっぱいになって。
まして当時の彼とわたしは、歳がひとつしか違わなくても、職場ではわたしが先輩とはいえども、人生の経験値は雲泥の差。
だからといって見下されたり、馬鹿にされたりはしない。…ただ、わたしが何か言う度、する度、彼は苦笑する。
それがいつの間にか、つらくなって。
そしてそれは、倖哉さんにも伝わって。
彼がお店を辞めたのを機に、わたしからお別れを告げて。
それっきり。連絡もつかなくなった。
だけど、悲しくはなかった。
わたし自身がこの『倖哉さん』という人を…
『好き』だと、自信を持って言えなくなったから。
だから今まであんまり思い出すことなく…というか
ハッキリ言ってしまえば、忘れて…いたんだろうな。
倖哉さんが言うように、肩に変な力を入れずに話せるのも…この人に、もう何の気持ちもないから。
──それはもちろん『彼ら』という、強烈過ぎる存在のせい。
「だからさ、あの頃より綺麗になったよ」
「そ…っ」
「今って、かれ…」
そこでおしゃべりは止まり、倖哉さんの視線は何故かどんどん天井を向いていった。どうしたんだろう?不思議に思った矢先。背後から、わたしの頭のてっぺんに、よぉぉく知っているぬくもりが拡がった。これは……掌。
「──こいつ俺の連れなんですけど。何か?」