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BeLoved.【蜜月記】
第14章 そういう男。2

「だから気にもしてねーって」

帰宅して。『玄関じゃなきゃ襲っていい』約束(…したっけ?!)が果たされるべく、彼の自室へ連れ込まれて。

上着を脱ぎネクタイを緩め、どんどん寛いだ格好になっていく彼にたじろぎつつも。ブチ切れさせ……もとい、気分を害してしまっただろうことをお詫びしたら、この返しだった。

「おまえホント俺の話聞かねーな」

同時に漏らされた溜息も怒りからでなく、同じことを何度も言わされた煩わしさから…だったとしても。わたしの萎縮は緩まない。

「でも…」
「なに。やっぱブチ切れた方が良かった?」

ベッド縁に腰を下ろした彼は、そばに突っ立ったままのわたしを見上げて問う。

怒鳴ったりテーブルを蹴飛ばしたり、なんなら倖哉さん本人に危害を加えたり。
それこそ『Don't touch mine』を体現(?)した方がよかったか、と。…そんな訳ない。力の限り首を横に振った。

「た…ただ、流星さま、め、目が怖かった、から…」
「…元々こーゆー目なんだけど。あーもーめんどくせ。来て」
「あ…」

手を引かれれば、もうそこは彼の腕の中。

向かい合う格好で膝上に座らされ、ワイシャツ越しに伝わる柔らかい固さとあたたかさと、独特の清涼感のある香りに包まれたら。…それだけで、心身の萎縮は緩んでいったのだった。

「なー」
「に"ゅっ」

そんな矢先、両頬を彼の片手で挟まれ、上向かされ。
変な声と、唇を尖らせた間抜け面を晒してしまった。


「そーだよな?」
「へっ?」

…そしてこの、主語のない問い。
思い切り怪訝な表情をしているだろうわたしに構うことなく、彼は…彼らしく、自分の思ったまんまを口にした。


「あの小僧、おまえの"初めて"の男だろ?」
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