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BeLoved.【蜜月記】
第14章 そういう男。2
倖哉さんはどうだっただろう。
優しくて、楽しくて、大事にしてくれた。…だけどやっぱり『違った』んだ。
倖哉さんにとっても、わたしにとっても。
一緒の時間が増えるにつれ、少しずつ見えてきた違和感。
噛み合わない波長。なんともいえない居心地の悪さ。
わたしはどうしたらいいのか、倖哉さんはどうしたいのか。
わからなくて、躍起になって、空回りして……苦笑されて。
倖哉さんはいつも『装って』いた。
優しくて、楽しくて、大事にしてくれても、決して本心を言葉にしてはくれなかった。
ただ…『空気』をまとわせただけだった。
最後はわたしの方から、別れを告げるように。
「──俺でよかったな」
暗く淀んだ心をすくい上げてくれたのは、耳慣れた彼の声。
動きを止めたことや、気持ちを自分から逸らしたことへの咎めじゃなく…静かで穏やかな、やさしい声だった。
「っえ?…ぁ…」
我に帰った頬に、掌が添えられて。
そっと上向かされた先には…わたしが映る、彼の漆黒の瞳。
「今おまえの隣に居んのがさ」
「…!」
「俺も、おまえでよかった。未結」
嘘がない彼の言葉と瞳は、いつも
わたしの心にまっすぐ突き刺さる。
「幸せだよ」
「ぁ…」
嘘がなくて、裏がなくて、いつでもありのまま。
愛してくれるだけじゃなくて…愛されてくれる。
わたしが好きになった流星は、そういう男だ。