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BeLoved.【蜜月記】
第14章 そういう男。2
「俺さ、あの三下に会ったことあった」
『彼』の元に向かう車内。思い出したんだけど、と、運転しながらまるで世間話でもするかのような軽い感じで、流星さまは話を続けた。
先月参加した、経営者向けのセミナー。…なんとそこに、倖哉さんも居たというのだ。
「参加者200人くらい居たんだけどさ。野郎、目立ってたよ」
「あ…なんかわかる気がします…」
「中卒でハタチで人材派遣会社立ち上げて~って話してて、俺もちょっと食指動いたんだけどさ。どーもいけ好かなくて関わらなかったのよ。実際あんまいーのも憑いてなかったしね」
…後半は聞かなかったことにして。
驚いた。倖哉さん、『やりたいことを探してる』とは言っていたけど…まさか起業していたなんて。
とにかくその時は倖哉さんとは特に接点は持たず終わった。けれども今日、実際に接してみたら……
「口が上手い姑息な野郎だってすぐにわかった」
……このご印象だったそうだ。「さすが俺」とも。
「ででもなにも潰さなくても…。…やっぱり…わたし、の…?」
「違げーよ。言ってんじゃん。俺は"今の未結"にしか興味ねーから、元彼(そっち)云々はどーでもいーって。たださ」
運転中だから眼鏡越しにこちらを一瞥し、片手をヒラヒラと左右に振って。彼は変わらぬ軽めの口調で…核心に触れた。
「"俺"の気に障ったんだよ」
──そう。これ以上の理由はないのだ。
「安心しろよー未結。正々堂々、正攻法でいくから。まーコレが麗だったら、裏から手ぇ回されて身ぐるみ剥がされて、大変だったろーけどね」
「……」
「ほんっと、俺でよかったな」
そう言って彼は、わたしの頭を撫でた。
その掌は大きくて…やっぱり、あたたかくて。
「……」
我儘で気分屋で、無神経で意地悪。
優しいと思った直後に冷たくなる。
その逆だって。いつだってそう。
一緒にいると振り回されてばっかり。
いつだって何処から何が飛んでくるか予想がつかなくて、ハラハラさせられっぱなし。…だけど、それが楽しい。
嘘がなくて、裏がなくて、いつでもまっすぐ、わたしだけを求めて愛してくれて…愛されてくれる。
わたしの流星は、そういう男だ。