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BeLoved.【蜜月記】
第15章 【裏】BeLoved.

『あたしはきっともう、永くないからさ。未結』

一年前。
元気一辺倒だったおばあちゃんに、病が見つかって。

通院治療がすぐ入院治療になって、あれよあれよという間に進行して、発覚から半年で…逝ってしまったのだけど。

入院した翌日だった。病室を訪れたらこの人たちがいて…おばあちゃんは先の言葉の後、こう言ったんだ。

『あんたのことは、この子らに任せてあるからね』


───────────────☙


『有栖川流星です』
『村上麗です』

よろしくお願いします、と。
わたしより少し年上で、わたしより少し(…いや、かなり)背の高い彼らは。
昔からおばあさま──朝比奈さんにはお世話になりました、その報恩をさせて頂きます。と。わたしに向かって深々と頭を下げた。

祖母が彼らに何をしたのか。いやそもそも、祖母と彼らはどういう間柄なのか。誰も答えてくれなくて。──しかも

『今日から一緒に住んでやって』

なんとおばあちゃんは、わたしの目の前で、わたしたちの家の鍵(!)まで、彼らに託した。
いわく『未結をひとりにするのはいろんな意味で怖い』。
だからって、いくらなんでも…。

防犯的な意味合いだったのだろうけど、素性の知れない人たち。しかも、男性。さすがに警戒した。

それからは、ひとつ屋根の下には居るけれど、会話は必要最低限。私物(特に洗濯物!)は彼らの目に触れないようにしたし、お風呂は秒殺。寝る時は彼らは居間で雑魚寝、わたしは自室に鍵をかけた。

だけど、彼らはやさしくて。おばあちゃんはもちろん、わたしの世話も甲斐甲斐しく焼いてくれた。

朝と晩には必ず食事の支度がしてあって。
家の中がいつも綺麗で、風通しも良くて。
夕方帰宅すると必ずお風呂が湧いていて。
『無理してませんか』と気遣ってくれて。

『あたしはきっともう…永くないからさ。未結』

笑ってはいても、その言葉通り日に日に弱っていくおばあちゃんを見るのは辛かった。だけど彼らのやさしさと…存在は、いつしか救いになった。

やがて迎えた──最期の日。わたしの警戒心は解けきった。
おばあちゃんに『ありがとうございました』と告げた彼らの瞳に、涙を見たから。
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