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BeLoved.【蜜月記】
第15章 【裏】BeLoved.
「痛くない?未結さん」
「痛らくなぃれす…」
間抜けな声と共に、よだれまで漏らしそう。
それくらい全身が脱力してしまう。
"いつもの"。それはこの、足のマッサージ。
職業柄、日中はほぼ立ち姿勢。なので夕方、退勤後には両脚がパンパンに浮腫んでいることが多いのだ。
それをこの、麗さんの掌と指が解かしてくれる。
しかも、片足を跪いた麗さんの片膝に乗せて行われるという、なんとも贅沢で気が引けるもの。
格好もさることながら、わたしが心配なのは…におい!!
通気性の良いパンストとシューズを選んではいるものの、一日を過ごした足!やっぱり気が気じゃなくて。
『全然気にならない』。彼の言葉(と視線)に圧され、観念した初回。あまりの気持ちよさに、心配はリンパの滞りと共に流れ去ったのだった。
──────────☙
「今日、特にひどいね」
「ぁ…混んれらし、時間かかる処置の方も多くれ…」
「頑張ったんだね。お疲れさま」
触れられたところはあたたかくなって、柔らかくなっていく。それがとにかく…気持ちよくて。
「どう?未結さん」
「きもりぃれふ・・・」
全身が脱力してしまうのも、仕方ないよね…
「──にしたって色々抜け過ぎじゃね?」
「ぎゅへっ?!」
突然、背後から顎を掴まれぐぐいと上向かされれば。
目ん玉ひんむきそうになるのも、蛙が潰れたような声を上げてしまったのも…仕方ないよね。
「 俺 の存在も抜けてない?未結サン」
「…流星ひゃん」
食卓の自席に座ったまま顔を覗き込んでくる、手と声の主は。それは面白くなさそうな表情。──それは、単に食事をお預けされているから、ではなくて。
「いらないよね?未結さん」
流星さんへ取り繕うより早く、足元から麗さんの声が刺さった。
……いらない?それは何に対して?……まさか。
「こっち、伝線してるよ」
「ぇあ…っ?」
いつの間にか、麗さんの手には反対の足。顎が掴まってしまっているからよく見えないけど、爪先から向こう脛の辺りまで、一直線に細く裂けてしまっているらしい。
…よかった。パンストの話か。