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BeLoved.【蜜月記】
第15章 【裏】BeLoved.
『ずっと好きでした』
彼らにそう切り出されたのは、高い高い煙突から立ち上る煙を、ぼんやりと見上げていた時だった。
この場にては不謹慎極まりないその言葉は。
射抜かれそうに鋭い漆黒の三白眼と、長い睫毛に縁取られた切れ長の赤墨色の瞳。彼らの視線よりも、真っ直ぐ。そして深く、わたしの心に突き刺さった。
『そばに居てもいいですか』
彼らへの警戒心はとうに消え去っていた。
孤独に耐えられる強さも自信もなかった。
なにより彼らはおばあちゃんが遺してくれた人たち。
断る理由なんてなかった。
始まった、3人暮らし。
掃除してくれた部屋に帰り、作ってくれたご飯を食べる。
同じ時間を過ごしていくうちに、少しずつ少しずつ。
触れられる時間が増えていって。───そして、現在。
「!やぁんっ」
そこで追憶は強制的に遮断された。
身を乗り出した流星さんが、うなじに唇を寄せたから。
「そこ…っゃ、んッ!やらぁ…っ」
一気に背筋を駆けるゾクゾクとした感覚。上がってしまう恥ずかしい声。逃れたくても、背中から抱きすくめられるように密着され、あまつさえ両方の手首を捕まえられてしまったら…適わなくて。
唇で甘噛むような啄みは、うなじから首筋、喉へと移動していく。愉むように軽く。だけど…自分の存在を刻み付けるように、重く。
「!ぁうぅっ」
その間も、麗さんの舌は愛撫を止めない。ピチャピチャと響く舌音に加え…彼は柔い力で歯を立てた。それはまるで、わたしの意識も感覚も、自分だけに向けろと言うかのように。
「あ、あっ、あ…ッ…、も…っだめ、ぃや…ぁ…っ」
繰り返される、異なる場所への同じ意図を秘めた口撃。
動きを封じられた現状、「いや」「だめ」と譫言のように繰り返しながら──翻弄されるしかなかった。
「…オイ流星、跡付けんなよ」
「えー俺猫だからマーキングしねーと」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ。困るの未結さんなんだよ」
「虫刺され ってことでいーんじゃね?」
……。"いつもの"やり取りのおかげで冷静になれた。
医院で着用するナース服は四角首。彼らが言うところの跡付け…マーキングをされてしまうと…丸見えだ。
一日二日で消えるものではないし、とても…困る!
「ごっ、ごはんにしますっ!」
「…。はい」
最終手段、雇用主権限(?)を行使したのだった。