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BeLoved.【蜜月記】
第7章 世界はそれを女王様と呼ぶんだぜ
「は?」
我ながら突拍子のない要望だったと思う。案の定、彼らの顔面には思いっきり『何言ってんだこいつ』と書かれている。
本当に、なんてわかりやすい人たちなんだろう…でも、今度はめげない。
彼らは激務、重責、不規則。そんな日常から、少しでも解放されて欲しい。『わたし』がしてあげたいんだ。
守られて、愛されるだけ。そんなわたしから少しでも脱却したい。変わりたい。それが、免許を取るうえで大切な原動力のひとつだったんだから。
その実現が『欲しいもの』。なによりの『ご褒美』だ。
「いーんじゃね?俺一番早くて再来週の水木なら空くよ」
「ローシーズンだし、平日なら予約も取りやすいかもね。何処行こうか、未結」
「あ…っ、実はもう、お宿の目星も付けてて…」
そこは、山の上に建つ老舗。広くて品の良い内装のお部屋は、なんと全室天然温泉の露天風呂付き。天気が良ければ雲海も臨めるらしい。お食事も豪華!!
昼間に印刷しておいた詳細をそれぞれに手渡す。しげしげと見入った彼らは、正反対の反応を見せた。
「あ、俺ここ知ってる。なんか良さげだよな」
「はいっ!」
「N県?また遠いところ選んだね…」
流星さまは好感触。麗さまは…やや怪訝な様子。
確かにちょっと距離はあるけど、非日常さを味わう為にも少し遠出をしてみたい。それに……
「未結が行きてーならいーんじゃねーの?麗」
「もちろん。未結の希望を最優先するよ」
「本当ですかっ?行きたかったんです!」
「それなら良か」
「わたしの運転で! 」
「えっ」
──やっぱり、運転がしたい!!
あんなに楽しいものだとは思わなかったから!!!
「ス、スパじゃ駄目なの?近所にあった…よね?」
「あーあ。麗もー無理だよ。こいつ言い出したら聞かねーし、そもそも”未結の希望を最優先する”って、お前さっきキメ顔で言っちゃったじゃん。ま、頑張れ。俺自分の車で行くから」
「…テメーも道連れに決まってんだろ流星」
なにやら揉めている気もするけど。とりあえず、出かけることは決定したのだった。