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BeLoved.【蜜月記】
第7章 世界はそれを女王様と呼ぶんだぜ
「…ごめんね、ちょっと寝かせて…」
よろよろと立ち上がった麗さまが、おぼつかない足取りで小上がりへ歩いていく。そして上着を脱ぐと、もぞもぞと布団の中に潜り込んだ。
「なに麗、お前そっちでいーの」
「うん…、俺布団がいい…」
「じゃーこっちは俺の陣地なー」
流星さまも立ち上がると、こちらはベッドにダイブするように俯せで倒れ込んだ(それでもまだ広さに余裕があるのがすごい…)。
…陣地って。小学生の男の子みたいな言い方に苦笑しつつ、わたしは小上がりに駆け寄り、麗さまの布団のそばに膝をついて覗き込んだ。具合が悪くなったのかと心配になったから。
「ん…大丈夫、ちょっと疲れただけ…」
「よかったです…」
「…夕飯6時だったよね。その頃起こし…て」
「あ…はい!ゆっくり休まれてくださいね」
声はとても眠たそうに掠れていたけれど、頬に触れる彼の手はいつも通り優しくて、あたたかくて。わたしの心配と不安を拭い去り、笑顔にさせてくれた。
それを見た彼もまた、笑みを返してくれる。
「ありがとう。…未結も長距離運転、お疲れさま」
「…あ」
彼の手は頬から離れ、後頭部まで移動して。そのままわたしを抱き寄せた。自分の方に、少しだけ…強い力で。
「……」
「!…れ… …ぁ」
耳元で囁かれた言葉に、思わず赤くなった直後。
頬へのキスを最後に、彼はこちらに背を向け寝に入ってしまった。
程なく聞こえ始めた寝息。寝付きいいなあ…そういえば、麗さま昨夜遅かったっけ。今日は朝早い出発だったし、道中あんなに騒いだし、疲れが出たのね、きっと。
今は3時半過ぎ。…2時間は眠れるかな。布団を掛け直していると、後方から声がした。
「っあー、ちょーっとスッキリした」
「えっ」
振り向いた先は、ベッド。上体を起こし、両腕を天井に向かい思いっきり突き上げて伸びをしている流星さまの姿。…なんと、寝ていたらしい…
「スッキリ…って、3分くらいしか経ってませんよ??」
「あー俺ショートスリーパーだから、それだけでも結構回復すんのよこれが」
「え~…本当ですか?」
にわかには信じられない話。だけど本人が言うんだから、そうなんだろうな。…なんて思っていたら、もうすっかり普段通りの、快活な声が響いた。
「さーて。風呂入るぞー、未結」