この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
BeLoved.【蜜月記】
第7章 世界はそれを女王様と呼ぶんだぜ
背後から呼び掛けられてる。「未結、未結」と。
でも、振り返らない。振り返りたくない。
少なくとも、自分の中のこのモヤモヤが晴れるまでは。
伏せったままでいたら…彼の方から寄ってきた。
「なー。聞いてる?」
「……」
「おーい、みーゆー。未ー結未結未」
「〰〰なんなんですか、もうっ!」
こっちの心中なんか知りもしない彼は、普段通りの間延びした声をかけてくる。それも、わたしと彼の『差』。
思い知らされ続ける状況に負け、喚きながら振り向いた。…ほら。それでも彼の表情は普段と変わらない。
「おまえ俺の言いたいこと、わかってねーだろ」
…言いたいこと。そんなのわかってる。
精一杯の対抗心をこめ、つっけんどんに言い放った。
「…ばかにしてるんですよね!」
「なんでそーなんの?違げーよ」
「じゃあ何な…、ん!」
突然ずずいっと顔を近付けられ、文字通り面喰らってしまった。彼の鋭くまっすぐな三白眼が、わたしを射抜く。予想外の言葉と共に。
「嬉しい。けど、淋しい。…って言いたいの」
「さみし…っ?」
「出来ねーと思ってたやつが、俺が手ぇ貸さなくても自力でやってのけたんだよ。それ、嬉しいけど淋しいじゃん」
「……」
流星さまはとてもわかりやすい。
流星さまは嘘をつかない。違う、つけない。
「"任せてください"ってさ、案外言えねーもんなんだよ」
オブラートも建前もない。いつだって、本心。
「行動力と向上心すげーな。って、尊敬もしたし」
だから彼の言葉は、彼の瞳以上にまっすぐ突き刺さる。
「わっかんねーかなー。ほら、なんか、親心みてーな?」
「なん…っ、なに言ってるんですかっ」
ほら、いつの間にかモヤモヤが小さくなって…
ううん。消えてる。ほら、わたし、笑ってる。
わたしの心を掻き乱すのが上手なこの人。
だけどそれを癒すのが上手なのもこの人。
「まー俺もヘタ麗もこんだけ変わったんだし、未結だって変わって当たり前だよな」
「あ…」
「間抜けは変わんねーけど」
「!また…っ!……」
相変わらずときめきだけでは終わらせてくれない。
反論するより早く、唇が唇で塞がれて。
それがゆっくり離れた後、彼の鋭くまっすぐな三白眼とまっすぐな言葉は、再びわたしを射抜いた。
「あと、俺が未結にベタ惚れってのも」
…適わないなぁ…