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BeLoved.【蜜月記】
第7章 世界はそれを女王様と呼ぶんだぜ

背後から呼び掛けられてる。「未結、未結」と。
でも、振り返らない。振り返りたくない。
少なくとも、自分の中のこのモヤモヤが晴れるまでは。

伏せったままでいたら…彼の方から寄ってきた。

「なー。聞いてる?」
「……」
「おーい、みーゆー。未ー結未結未」
「〰〰なんなんですか、もうっ!」

こっちの心中なんか知りもしない彼は、普段通りの間延びした声をかけてくる。それも、わたしと彼の『差』。
思い知らされ続ける状況に負け、喚きながら振り向いた。…ほら。それでも彼の表情は普段と変わらない。

「おまえ俺の言いたいこと、わかってねーだろ」

…言いたいこと。そんなのわかってる。
精一杯の対抗心をこめ、つっけんどんに言い放った。

「…ばかにしてるんですよね!」
「なんでそーなんの?違げーよ」
「じゃあ何な…、ん!」

突然ずずいっと顔を近付けられ、文字通り面喰らってしまった。彼の鋭くまっすぐな三白眼が、わたしを射抜く。予想外の言葉と共に。

「嬉しい。けど、淋しい。…って言いたいの」
「さみし…っ?」
「出来ねーと思ってたやつが、俺が手ぇ貸さなくても自力でやってのけたんだよ。それ、嬉しいけど淋しいじゃん」
「……」

流星さまはとてもわかりやすい。
流星さまは嘘をつかない。違う、つけない。

「"任せてください"ってさ、案外言えねーもんなんだよ」

オブラートも建前もない。いつだって、本心。

「行動力と向上心すげーな。って、尊敬もしたし」

だから彼の言葉は、彼の瞳以上にまっすぐ突き刺さる。

「わっかんねーかなー。ほら、なんか、親心みてーな?」
「なん…っ、なに言ってるんですかっ」

ほら、いつの間にかモヤモヤが小さくなって…
ううん。消えてる。ほら、わたし、笑ってる。

わたしの心を掻き乱すのが上手なこの人。
だけどそれを癒すのが上手なのもこの人。

「まー俺もヘタ麗もこんだけ変わったんだし、未結だって変わって当たり前だよな」
「あ…」
「間抜けは変わんねーけど」
「!また…っ!……」

相変わらずときめきだけでは終わらせてくれない。
反論するより早く、唇が唇で塞がれて。

それがゆっくり離れた後、彼の鋭くまっすぐな三白眼とまっすぐな言葉は、再びわたしを射抜いた。

「あと、俺が未結にベタ惚れってのも」


…適わないなぁ…
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