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BeLoved.【蜜月記】
第7章 世界はそれを女王様と呼ぶんだぜ
すっかり日が暮れて。窓の外の景色は闇に包まれ、昼間とはまた違った雰囲気を醸し出してくれている。
空と山並みはそれぞれ濃淡の違う群青色。山間からはうっすらと麓の夜景が見えて。
ふと見上げれば… うわっ、星が近い。山だもんね…。
周囲に余計な明かりが無いから、月と星が普段おうちから見ているものより遥かに明るく…昼間とはまた違う『絶景』だった。
「麗さま見てくださ……って、あれっ?」
興奮あらわに振り向いたら、そこに居たはずの彼の姿が消えていた。同時に、露天風呂とは別に設えてあるシャワールームの方から、微かな水音が……え?シャワー浴びてる??
ぽかんとしている間にドアが開き、適当に着付けた浴衣に身を包んだ彼が姿を現した。
「?どうしたの?未結」
被ったタオルで髪を拭いながら、不思議そうな顔をして逆に尋ねてくる。…どうしたのって、貴方こそ…。
やっぱりこの人ももう御一方同様、我が道を行く人だ。
「だ、大浴場は行かれない…んですか?」
「24時まで開いてるそうだし、後で行くよ」
「じゃなっ、なんで今シャワー浴びて」
「ねえ」
話している間に距離を縮められ、窓ガラスと彼との間に挟まれる格好になってしまった。…逃げられない。
彼の右手の甲が頬に触れ、おうちのものとは違う石鹸の、微かな香りが鼻をくすぐった。
…それだけなのに、顔は紅潮し、心臓は高鳴る。しかしそんなわたしとは正反対に、彼は平静で。
「さっき言ったこと、していい?」
「…さっき?」
「俺が寝る前に言ったよね」
──言われたこと。麗さまが寝付く前に言われ……
「!」
「思い出してくれた?」
見上げた先の笑顔は優しく秀麗で…有無を言わさぬ威圧感を纏ったもの。
…思い出した。麗さまが寝付く間際、抱き寄せられて、耳元で告げられた言葉。
流星さまに抱かれる前に告げられた……戒め。
『流星に何されても、全部塗り潰してあげるね』