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BeLoved.【蜜月記】
第7章 世界はそれを女王様と呼ぶんだぜ
今、この部屋には『誰も居ない』。
だから明かりは点けられない。
だけど窓から差し込む月明かりのおかげで、わたしはわたしに覆い被さる眼の前の彼の姿を、しっかり見て取ることができた。
──そしてそれは、わたしを苦しめている。
「れ……ぉねが…っ、カーテン…、閉め…っ…」
「外からなんて見えないよ」
寝かされた背中に、心地よい固さを伝えてくれる布団が敷かれた小上がりは、窓から離れた位置にある。
…そもそもこの部屋は上層階だし、彼の言う通り、外から見える心配はないんだけれど…問題はそこじゃない。両手で顔を覆った。
「…どうしたの?未結、手どけて?」
「〰〰っ」
…彼の色気がものすごいのだ。
整った面貌に、だらしなくはだけられた浴衣から覗く肌。月明かりに照らされる彼の全ては…妖艶で。
和装って…着崩すとこうも扇情的なの?……彼だから?
…だめだ、ドキドキし過ぎて直視できない。
「未結、手どけて?」
優しく呼び掛けられても、頭を左右に振った。
嫌…というか、無理です…。できません…。
「!あ…っ、…んんっ」
温かい舌が首筋を這い上がった。不意打ちに、全身はビクリと震え跳ねたけれど…手は死守できた。
すると彼は再び呼び掛けてきた。…少しずつ声色を変えながら。
「未結、手どけて」
「……」
「未結」
「……」
「──未結ちゃん」
「!」
逆らいすぎた。
気付いた時には両手は彼によって解かれていて。
窓から差し込む月明かりの下、わたしはわたしを見下ろす彼の瞳を、しっかり見て取ることができた。
──そしてそれは、わたしを射抜いた。
優しさが鳴りを潜め、代わりに、独占欲と…雌を求めて止まない雄の色を滲ませた瞳で。彼は呟いたのだった。
「…手、縛っちゃおうか」